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【飛躍へ向けて】磨こう「福島ブランド」(12月30日)

 東日本大震災と東京電力福島第一原発事故から7年目となった2017(平成29)年は復興が力強さを増し、県民を勇気づける話題が目に付いた。だが、災害の深手は容易に癒やされるものではなく、明と暗が依然交錯する。郷土に誇りを持ち、「福島ブランド」を磨き上げていくことが飛躍への必須条件だ。
 福島民報の読者が選ぶ今年の県内十大ニュースで1位になったのは、飛行機の世界最高峰レース「レッドブル・エアレース・ワールドチャンピオンシップ2017」でアジア人初の年間総合優勝を果たした室屋義秀選手(福島市)の活躍だった。室屋選手は福島市の農道空港「ふくしまスカイパーク」を拠点に練習を重ね、世界を転戦した。県民栄誉賞にも輝き、12月の市街地パレードでは県民も喜びを共にすることができた。
 震災などの影響を乗り越えて地方都市から世界のひのき舞台に躍り出た軌跡が県民の心の琴線に触れた。福島復興のシンボルと言えよう。
 全国新酒鑑評会での県産酒の金賞受賞数5年連続「日本一」、聖光学院高の11年連続夏の甲子園出場と2年連続ベスト16、東北中央自動車道の福島大笹生インターチェンジ(IC、福島市)-米沢北IC(山形県)開通も十大ニュースに選ばれた。喜ばしい話題が県民の心を捉えた。
 震災、原発事故関連の出来事では浪江町、飯舘村、川俣町山木屋地区、富岡町の避難指示解除、原発事故の被災者約3800人が慰謝料などを求めた生業[なりわい]訴訟で福島地裁が国と東電の責任を認めて総額約5億円の支払いを命じた判決公判、中間貯蔵施設の本格稼働が入った。県民生活に落ち着きを取り戻す動きが多かった。原発廃炉や避難住民の生活安定など課題は残る。新年は復興加速を期待したい。
 福島復興再生特別措置法による復興・創生期間は2020年度まで。期間終了後に国などの支援がいつまでどのように続くのか、見通しは立っていない。必要な賠償や支援は求め続けて当然だが、最も大切なのは自立を図ることだ。県民は風評と闘いながら産業や地域づくり、人材育成に努めてきた。その成果が今年の酒造業の躍進であり、スポーツや文化での若者の活躍なのだ。自信を持っていい。
 人口減少や高齢化など日本を覆う諸問題は本県で色濃く表れている。生かし切っていない能力を引き出し、伸ばす。魅力を国内外に伝え、理解してもらう-。地道な取り組みを新年以降も追求していくべきだ。課題解決の先進県ともなるはずだ。(鞍田炎)

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