あぶくま抄・論説

あぶくま抄

  • Check

変わらぬ願い(1月1日)

 昭和が終わり戸惑いの中で新年号「平成」が始まって30年。いつごろからか、暮らしの中には当然のように「平成」の時間が流れるようになった。新しく家族となった他人同士が長年起居を共にするうち、互いの存在に慣れていく感覚に近いだろうか。
 昭和と平成、二つの時代を生きる者にとって、家族と聞いて思い浮かべる例の一つに映画「男はつらいよ」の車寅次郎とさくらの兄妹を取り巻く一家がある。笑いと涙の物語は人気を重ね、シリーズは48本を数えた。36作目の正月映画は紅葉の会津でロケを行っている。
 失恋して傷心の兄を気遣う妹。けなげな姿から肉親への思いがひしひしと伝わった。演じた倍賞千恵子さんに心の中で喝采を送ったファンも多かろう。渥美清さんの死去後は思い出が詰まった本も出版した。倍賞さんにとって渥美さんは「お兄ちゃん」であり続けた。
 江戸川柳にある。「まよい子の親はしゃがれて礼を言い」。わが子を声をからして探し回り、見つけた時には探してくれた人にお礼する声を出すのもつらいほどだった-。家族という近しい存在の息災と幸福。時を経ても変わらないその願いを年の初めに新たにする。

カテゴリー:あぶくま抄

あぶくま抄

>>一覧