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【新年を迎えて】新しい「将来之福島」を(1月1日)

 昨年、ベストセラーとなった「未来の年表」(河合雅司著、講談社現代新書)には、わずか数年から数十年先の日本社会における驚くべき見通しが列挙されている。
 2020年には女性の半数が50歳を超える。2024年には全国民の3人に1人が65歳以上になる。2033年には3戸に1戸が空き家になる。2040年には自治体の半数が消滅する。
 副題は「人口減少日本でこれから起きること」。本県も当然、この現実に直面する。被災地のハンディで、流れは他県より加速する可能性もある。ではどうすればいいのか。唯々諾々と国の政策に従っていればいいのだろうか。
 日露戦争直後の1906(明治39)年に、半谷清寿[はんがいせいじゅ]という人物によって書かれた「将来之東北」という著作がある。東北開発の取り扱うべき諸問題を初めて総合的に論じたとされ、提唱された東北振興開発のための調査会設置は、その後の「東北振興調査会」構想につながった。
 半谷は相馬藩小高郷に生まれた。相馬藩は二宮尊徳の教えに基づく報徳仕法によって大飢饉[ききん]からの再建を目指したが、維新の大変革は純農主義の限界も半谷に感じさせた。
 実業の重要性に目覚めた半谷は小高に養蚕や織物業を興し、富岡の夜の森の開拓に当たったが、幾多の挫折も味わった。資本を集める困難、産品の価格低迷などは東北の後進性ゆえとも分析した。
 経験に裏打ちされた振興策を提言した「将来之東北」には後藤新平、新渡戸稲造、原敬らが序文などを寄せた。しばらく歴史に埋もれていた同書は約60年後、東北大教授や県立博物館長を務めた高橋富雄氏によって再版された。
 半谷の分析と主張は時代背景の違いもあり、そのまま現代に通用する理論ではない。しかし半谷の主張が時を超えて人を引き付け、鼓舞するのは、東北の困難をなんとか克服しようと、環境や因習と格闘した経験に基づく自立、自助の意思の強さ故だろう。今の福島に最も求められるのはそんな気概ではないか。
 今年は震災と原発事故から8年目だ。福島・国際研究産業都市(イノベーション・コースト)構想などの産業政策が進み、帰還困難区域では特定復興再生拠点区域が整備へと動く。しかし、進む少子高齢化の中、子育て、医療、教育、まちづくりなど課題は幅広い。福島を世界、そして日本の中で、どんな姿として次代につなげていくのか。県民自らが自立の気概を持って新しい「将来之福島」を描く必要がある。(佐久間順)

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