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移動販売が「命綱」 ふくしまに生きる 西会津町奥川地区(2)

 雪が吹き付ける昨年12月26日午後、西会津町奥川地区の集落に移動販売トラックが演歌を流しながら到着した。荒川ミツイ(85)は玄関から駆け出す。「豚肉とかまぼこ、それから伊達巻きをもらうがんね」。正月用に1週間分の食材や雑貨を買い込んだ。トラックを運転してきた福島屋商店主の荒海享俊(あらうみ・たかとし)=(49)=と世間話が弾み、笑みがこぼれる。「移動販売は命綱みたいなもんだ」

 荒川は2011(平成23)年に夫秀男=当時(84)=を亡くしてからずっと一人暮らし。2人の息子は町を離れ、会津若松市と川崎市に住む。スーパーまでは片道約20キロ、車で約30分はかかる。50ccバイクを持っているが、体力の衰えから地区内での運転にとどめている。買い物は移動販売に頼るしかない。
 息子たちからは一緒に暮らそうと何度も誘われている。だが、答えはいつも同じだ。「今更、先祖代々の土地を離れることはできねえ」。知らない土地での生活には不安がある。

 荒海は100年以上前から続く小売業の4代目だ。千葉大法経学部を卒業後、栃木県のスーパーに就職した。2年後の1995年、地元奥川に戻り、父享雄(たかお)の跡を継いだ。地区内で生鮮食料品を扱う唯一の商店だ。移動販売の営業は週5日、午後の3時間程度。約50キロ離れた会津若松市内で仕入れた卵や肉、菓子、総菜など約500品目をトラックに積み込み、地区内の全20集落を巡る。
 人口減とともに売り上げも減り続けている。経営は楽ではないが使命感がある。住民から頼りにされていた父の姿を見て育った。「ああいう存在になりたい。『来てくれて助かる』と言う住民がいる限り、営業をやめるわけにはいかない」(文中敬称略)

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週1回、移動販売車で荒川さん(右)の自宅を訪れる荒海さん。会話が弾み、自然と笑みがこぼれる
週1回、移動販売車で荒川さん(右)の自宅を訪れる荒海さん。会話が弾み、自然と笑みがこぼれる

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