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【帰還困難区域の復興】拠点整備具現化の年に(1月4日)

 東京電力福島第一原発事故で立ち入りが制限されている帰還困難区域の復興にとって今年は大事な1年になる。環境省は昨年暮れ、双葉町の特定復興再生拠点区域(復興拠点)整備に向けた除染と建物解体を始めた。帰還困難区域が設定された7市町村で初めてだ。震災と原発事故から間もなく丸7年を迎える中で、ようやく一歩を踏み出したことになる。復興拠点を目に見える形で整備し、古里再生への道筋を示す年にしたい。
 福島第一原発が立地する双葉町は96%が帰還困難区域で、町面積の11%に当たる約555ヘクタールを復興拠点に設定した。今回は2019年度完成予定の常磐自動車道双葉インターチェンジ(仮称)、JR双葉駅周辺、産業拠点や復興祈念公園を結ぶ県道を中心に除染と建物解体を一体で行っている。工期の短縮や廃棄物発生量を抑える狙いがあり、今後整備が予定されている他の自治体の復興拠点のモデルになるとみられている。
 7年近い年月は町の姿を大きく変えた。道路や住宅地は雑草に覆われ、家屋は傷みが進んでいる。復興庁が一昨年9月に実施した双葉町民意向調査では、避難指示解除後に「戻りたい」と答えた町民は13・4%にとどまっている。それだけ困難は伴うが、いち早く除染や家屋解体を進め、復興に向かっている古里の姿を発信することが重要だ。何より帰還したいと願う町民の希望につながる。
 復興拠点の整備は、国が主導し、道路の拡幅などインフラの整備を併せて行う。廃炉関係の企業や研究機関を誘致できれば、新たな町民の定住や交流人口拡大の可能性が見えてくる。双葉町をはじめ当該市町村には震災前の町を再現するのではなく、復興拠点を起点に、全く新しい町をつくり出すという発想が必要になる。ただ、市町村によって抱える帰還困難区域の事情は異なる。国はそれを十分に考慮した上で、それぞれの現状に即した支援が求められる。
 国は昨年、避難指示解除準備、居住制限両区域の大部分で避難指示を解除した。避難区域の面積は当初の約1150平方キロから約3分の1の約369平方キロに減少した。とはいえ、JR山手線内の土地の6倍近くが今も帰還できないままになっている。政府は2018年度予算案に復興拠点整備事業費として約690億円を計上した。人のいない地域に巨額の国費を投ずるのかという批判は当たらない。原子力政策は国策として国が進めてきた。最も困難な地域の復興を支援する責任が、国にはある。(鎌田喜之)

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