あぶくま抄・論説

論説

  • Check

【会津の戊辰150年】何を残し、伝えるか(1月12日)

 戊辰戦争から150年の大きな節目の年を迎えた。最大の戦場となった会津若松市は「『義』の想い。つなげ未来へ-。戊辰150周年」をキャッチフレーズに掲げている。戦禍の犠牲となった先人の魂を慰めるとともに、愚直なまでに誠実で人間愛に満ちた「会津人」の精神を再確認し、次世代につないでいく機会としたい。
 会津若松市では、年間を通して記念事業や関連事業が続く。28日には、市がオープニング記念と位置付ける直木賞作家中村彰彦さんの歴史講演会が開かれる。400人の定員は既に満杯状態だ。プレイベントが進められてきた昨年は、市民の一部から「関心が高まっていない」との声が出ていたが、幸先の良い出足を歓迎したい。
 東日本大震災と東京電力福島第一原発事故による風評が残る中、観光振興の側面からも大いに活用したい。多くの人が訪れ、会津の人が各地に出向くことが理解の促進につながり、地域の活性化に役立つ。3月23、24の両日は、鶴ケ城天守閣に映像を投影するプロジェクションマッピングが展開される。「戊辰の風 花の雲」と銘打ち、花や白虎隊などを題材とした美しい映像に生演奏が加わる。春の観光に向けた起爆剤となるよう期待したい。
 会津藩主松平容保が京都守護職として幕末に過ごした京都市は昨年「大政奉還150年」の事業を進めた。戊辰戦争で敵対した長州藩のあった山口県はJR西日本と「明治維新150年観光維新共同宣言」を発し、地元の魅力や資源の再発見、再認識に乗り出している。それぞれに立場の違いはあるが、こうした地域との交流も積極的に進めるべきだろう。
 昨年11月、会津藩校日新館館長の宗像精さんは、山口県萩市の市民有志の団体「長州と会津の友好を考える会」の招きで講演した。「史実やさまざまな感情を考慮すると真の仲直りは難しい」「いつまでも恨み合っていても仕方がない。教育に力を注ぎ、ともに日本の将来を考えたい」。率直な発言は、お互いをもっと理解したいという動機付けとなったに違いない。
 会津若松市や記念事業実行委員会の事業は、市民向けや地元への誘客が中心になりがちだ。外部との新たな交流のきっかけは民間団体や個人の方がつくりやすい。一人一人が戊辰戦争から150年の節目を意識し、発信の機会を持ちたい。二本松、白河など県内に数多く残る戊辰戦争の歴史を刻む地との連携も忘れてはならない。(安斎康史)

カテゴリー:論説

論説

>>一覧