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思い込み(1月13日)

 随筆「どくとるマンボウ青春記」は北杜夫さんと父の大歌人斎藤茂吉との掛け合いが面白い。東北大医学部に入学した北さんは小説執筆にのめり込む。大学から足が遠のいていることを伝え聞き、原因が放蕩[ほうとう]と勘違いした父からはがきが届く。-女はこわいものだから絶対に近寄ってはならならぬ-。
 堅物親父[おやじ]の激しい思い込みも、難関を突破し医師の道を歩むはずの息子の将来を心配したと思えばどこかほほ笑ましい。しかし中には笑えない思い込みもある。その一つが先頃判明した大阪大入試ミスだ。
 物理の問題で正答が複数あったのに正答を一つだけとした。このため、その解答を前提とした次問も解けなくなった。学外から三度にわたる指摘を受けてミスを認めた。時間がかかったことについて、大学側は問題作成者に正しいという思い込みがあったとする。
 IPS細胞研究の山中伸弥さんは、学生に実験の大切さを強調する。予想通りにならないところに科学の面白さがあるとの信念は思い込みの対極ともいえよう。きょうから県内でも大学入試センター試験が行われる。受験する側も思い込みは禁物だ。答えに向き合う謙虚さを思い出してみたい。

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