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簡単ではない憲法9条改正(1月14日)

 安倍晋三首相が年頭の記者会見で、憲法改正のための国会発議に向けて並々ならぬ意欲を表明した。自民党の改憲案を提示し、今年中にも国会の発議に持ち込みたいとの意向を明言したのである。
 「スケジュールありきではない」とも述べたが、どうみても政治日程に沿った発言である。首相はかねて、2020年7月の東京五輪は改憲を実現させた下で迎え「日本が大きく生まれ変わる年にしたい」と表明している。
 本来、五輪開催と憲法改正は何の関係もない話。五輪はある意味で「国威発揚」の場となる。首相の頭にはこの2つが二重写しになり、五輪の年から逆算したスケジュールがあるのだろう。
 だが、そう簡単に思惑通りに進むとも思えない。首相の最大の狙いは9条に自衛隊を明記することにある。自ら9条の1項(戦争放棄)、2項(戦力不保持と交戦権否認)を残したままで、自衛隊の存在を書き込む案をぶち上げており、自民党案はその方向で集約されるとみられる。
 ただし自衛隊をどのような存在とし役割を規定するのかは、これからのことである。集団的自衛権を容認した安全保障関連法をさらに拡大するような内容であれば、国会の憲法審査会の論議はまとまるとは思えない。
 ただでさえ野党第一党の立憲民主党は安保関連法は「違憲」だとしており、この法律を前提とした改憲論議には応じない立場だ。与党内でも公明党は安倍案に同調しているわけではない。衆参両院で「改憲勢力」が国会発議に必要な3分の2に達しているとはいえ、その内実は一様ではない。
 首相は「政治だから全ての(政党の)理解をいただけるわけではない」と述べ、立憲民主党や共産党などが反対しても、最終的には数の力で発議を強行することをちらつかせた。
 安全保障関連法や「共謀罪」を成立させたときのように、反対を押し切る強硬手段だが、しかし、国の基本である憲法改正問題で同じ手法は無理ではないか。第一、改憲勢力がそのような強行策で結束できるのか。疑問である。
 首相がボルテージを上げるのに比べ、国民にそれほど改憲熱があるわけではない。メディアが定期的に行っている世論調査のトレンドで明らかだ。国会発議を急ぐべきではないとする意見が3分の2を占めたり、9条改正は必要ないが5割を超えたりしている。
 仮に無理に国会発議にこぎつけたとしても、国民投票が待ち構えている。自民党の改憲テーマとは9条改正、緊急事態条項、教育無償化、参院選の「合区」解消の4項目。
 国民投票法では一括して国民に問うのではなく、一項目ごとに賛成か反対の投票をする。他の項目は別として、現時点では9条改正案が国民の多数を得られる保証はないのではないか。(国分俊英 元共同通信社編集局長、本宮市出身)

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