あぶくま抄・論説

論説

  • Check

【いわき志塾】夢の実現が地域の力に(2月6日)

 いわき市の次代を担う人材を育てるキャリア教育の一つに「いわき志塾[しじゅく]」がある。市内の中学生が企業経営者や科学者、スポーツ選手らの話を聴き、夢の実現のため何をすべきかを学び、自分の生き方を考える機会としている。講師の話は成功事例だけではなく、失敗や挫折を味わった経験もある。生徒は、さまざまな人々の考えと取り組みから目標や進路を見つけて一歩を踏み出してほしい。
 いわき志塾は2014(平成26)年度から市教委の主催で始まった。その3年前から続く中学校の生徒会長を中心にした生徒会長サミットと同様、夢と希望と志を持つ未来のリーダー養成を目的にしている。全ての中学生を対象に、6月から翌年2月まで計9回開かれ、毎回100人程度の生徒を募っている。
 塾は単に話を聴くだけではない。生徒は内容によって招く10人ほどの講師の下でグループごとに活動し、講話や質疑応答で理解を深める。学んだ成果をまとめ、図表や寸劇などで発表する。作業の過程で企画力、問題解決力、実践力を備えさせるという。
 講師陣は中央省庁職員や宇宙研究機関の関係者、医療従事者、法曹関係者ら幅広い。首都圏の大手企業を訪ねて学ぶこともある。国内はもちろん世界を相手にする仕事や、人々の身近にいて支える役割を知り、自らの指針にするきっかけが芽生えるようだ。
 一方で、成功より失敗から多くを学ぶ例もある。一昨年のリオデジャネイロ五輪前、レスリングで出場を目指した市内に生産拠点がある企業の女子選手が講師を務めた。練習や日常生活での心掛けを説いたが、けがの影響で夢はかなわなかった。それでも努力を続け、昨年の世界選手権で初めて3位になった。当時、話を聴いた生徒たちには、挫折を乗り越えた選手が貴重なお手本になったはずだ。
 毎年度の最後に講師を務めるのは地元企業の関係者だ。規模の大小に関わらず、伝統産業の発展継承や先端技術による新分野の開拓など、それぞれの仕事にかける情熱と目指す姿を語る。生徒が将来、古里に残るかどうかは別として、志した道が巡り巡って、地域の力にもなると感じてもらいたい。
 新たに学校版「スクール志塾」も始まった。学校ごとに全校生が地域の課題について意見交換し、解決に向けてアイデアを出す。課題提起や取り組みを説明するのは地元住民だ。市の教育理念「地域が人を育み、人が地域をつくる」の実践が、さらに広がるよう期待する。(浅倉哲也)

カテゴリー:論説

論説

>>一覧