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真心が見える(3月18日)

 住宅での除染作業の様子を視察するため、ゆっくりと坂道を上ってこられた。皇后さまはそっと天皇陛下の腕に手を添えて。6年前の秋、川内村での一場面だ。互いをいたわる笑顔が、居合わせた人の心を温かくした。
 両陛下は6月、南相馬市で開かれる全国植樹祭に出席し、併せて県内の復興状況を視察される。避難生活を続ける被災者、津波犠牲者の遺族を激励する。震災後、県内を訪れるのは6度目だ。その姿はこれまで、明日に迷う人の一筋の光となった。県民は万感の思いで、公務としては最後であろう来県を待つ。
 両陛下は今月下旬、沖縄県を訪問される。太平洋戦争の沖縄戦で逝った20万人を慰める。終戦から70年以上過ぎ、戦火の語り部は少なくなった。現地では、誰が歴史を後世につないでいくかが課題となっている。こうした中、もう一度、恒久平和への願いを国民に伝えたいのだろう。
 福島と沖縄-。片や複合災害、片や基地負担という出口の見えない苦しみにあえいでいる。直接、言葉を発することはない。それでも、お二人は両県民の姿を、常に心のどこかに置いておられるに違いない。来年の退位を前にした旅路に真心が見える。

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