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【いわきの事業承継】実態に応じ支援充実を(3月20日)

 いわき商工会議所は小規模事業者に寄り添った伴走型支援推進事業を展開している。その一つに後継者問題に対応する事業承継支援がある。今年度の調査で回答者の26%が後継者がなく、譲渡などによって引き継がずに廃業を考えているとした。業種により事情は異なるが、後継候補がいないと回答した割合は、卸・小売業や飲食業などが比較的高い。市街地に空き店舗が目立つ原因とならないよう個別支援の充実や経営者の啓発などに努めてほしい。
 伴走型支援推進事業の計画は、東日本大震災を受けて策定された。初年度の2015(平成27)年度の聞き取り調査では「後継者不在により廃業を検討」という回答が35%を占めた。地域経済の将来に危機感を抱いた商工会議所は、地元の商工会連合会や金融機関、税理士・会計士ら専門家とともに、いわき事業承継支援センターを設けた。
 経営者の高齢化が進む中、センターは後継者の確保・育成、技術や手法の伝承が急務と捉える。経営者に対し、事業承継対策の重要性と計画的な取り組みの必要性を説いている。親族・従業員への承継は計画に沿った円滑な実行、社外への事業の引き継ぎは株式・事業用資産などの売却や譲渡も視野に入れる。
 今年度の調査は回答者を業種別、年代別に分け、後継候補の有無などにより選択する形式で行った。何らかの形で事業承継を予定している経営者は60%いた。準備に向けた相談先がないとの回答は70%以上を占め、個々の状況に応じた対策が望まれている。
 後継候補がいない事業所が、売却や譲渡で引き継ぐ考えは93%が否定的だった。分析では、小規模や家族経営が多い業種で買い手がいるのかを疑問視したり、抵抗を感じたりする表れと想定する。支援する側も親身になって可能性を探る行動が必要だろう。
 経営環境の厳しさから事業承継に消極的な姿勢の小売業や飲食業にも光はある。中心街の平商店会連合会が進める一店逸品運動は、その一つだ。毎年、こだわりの品物やサービスを一つずつ開発し、個々の魅力を高めている。取り組みは11年目に入った。年4回の「お店回りツアー」は客に逸品を見つける楽しみと、商店街への回遊をもたらす。
 最近は周囲に高層マンションが増え、郊外型の大型店より近くの店に足を運ぶ人も多い。商店主の一人は「参加店は減ったが、お客さまの喜ぶ顔が何よりの励み」と継続を誓う。「もう少し頑張ってみるか」という思いの広がりに期待したい。(浅倉哲也)

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