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ムクロジの数珠(3月21日)

 寺社仏閣を訪れると、足元に直径1センチほどの黒い実を見つけることがある。樹高が15メートルにもなるムクロジの実だ。漢字では「無患子」と書く。子どもが病気にかからないとの意味がある。魔よけとしても知られ、羽子板遊びの羽根の玉などに使われてきた。
 お釈迦[しゃか]様からの贈り物とも言われる。煩悩の滅し方を問われ、108個のムクロジの実で輪を作り、御[み]仏の名前を繰り返し唱えるように答えたという。この教えを王が実行したところ、国家が安定したとの話もある。お釈迦様も自ら数珠を作り、弟子に分けたとされる。
 仏壇修理をなりわいにしてきた会津若松市の老職人が昨年から手首に付ける数珠づくりに励んでいる。仕事や私生活でお世話になった人に、お守りとしてプレゼントするためだ。数千個も集めたムクロジの実から同じ大きさの12個を選び、ガラス製の飾り玉4個と組み合わせる。きりで穴を開け、ゴムひもを通して仕上げる。
 80歳を超えても器用に工具を操り、この冬だけで100個以上を完成させた。お釈迦様ならぬ、大黒様のような穏やかな表情で、幸せが数珠のように連なる人生を願う。匠[たくみ]からの贈り物は俗世の心を鎮める。

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