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【遠隔診療】本県が先駆けとなれ(4月5日)

 南相馬市立総合病院で遠隔診療システムによる透析治療が始まった。福島市の福島医大の専門医が、タブレットの映像画面などを通して患者の様子やデータを確認しながら総合病院の医師らに指示を出し、透析を行う。国内初の試みだ。
 背景には東日本大震災と東京電力福島第一原発事故から7年を経ても医療体制が震災前の水準に戻らない被災地の現状がある。医師不足の中で、住民への医療サービスを確保するには、従来とは異なるシステム構築が求められる。
 遠隔診療とは通信技術を活用して医師が遠隔地から患者の診察と診療を行うことをいう。地域医療を充実させる大きな可能性を秘めた一つの方法だ。関係市町村は、積極的に取り入れる方策を探り、有効な活用が図られるよう国や関係機関に支援を働き掛けるべきだ。
 県内では震災後に、南会津地方でへき地医療の一環として試みられたが、当時は、法整備が追い付いていなかった。被災地の深刻な医師不足などから再び注目される。昨年5月に南相馬市の市立小高病院で、交通手段のない高齢者の在宅診療を強化するため、タブレット端末を利用した診療が始まった。10月から、いわき市の病院は睡眠時無呼吸症候群の治療に役立てている。
 法的に容認され始めたのはつい最近だが、以前から検討は続けられてきた。1996(平成8)年に厚生労働省に研究班が組織され、翌年に基本的考えが示された。しかし、医師の無診察治療を禁ずる医師法20条に抵触する恐れがあった。2005年に日本遠隔医療学会が発足し、定義の見直しを行う。ただし、医師法との線引きはあいまいのままだった。昨年7月に厚労省が禁煙治療で初めて直接対面をしない治療を条件付きで認めたことで、大きく前進する。
 今春の診療報酬の改定で厚労省は、高齢者が住み慣れた地域で最後まで暮らせる仕組みづくりを掲げ、介護と連携した在宅医療や施設でのみとりを進める方針を打ち出した。その上で、新たに遠隔診療に報酬を認め、医師が取り組みやすい環境を整えた。
 医療の充実は地域再生の大きな鍵を握る。だからこそ、病床数などだけにこだわるのではなく、未来の地域医療を見据えた「福島方式」を構築してみてはどうだろう。注目が集まり、人が集まれば、医療体制の好循環を生み出すかもしれない。今こそ、相双地方が遠隔診療の先駆けになる時だ。(関根英樹)

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