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製品軽量化“折り合う” 競馬勝負服メーカー「河野テーラー」

 福島市桜木町の競馬勝負服製造メーカー「河野テーラー」は、同市五老内町の染物店「安彦染工場」の支援を受け、従来製より大幅に軽い独自の製品を開発した。東日本大震災と東京電力福島第一原発事故発生後、受注が落ち込み、社長の河野正典さん(46)は新たな顧客を求め競馬場を巡った。待っていたのは、「少しでも軽い勝負服がほしい」という減量に苦しむ騎手の声だった。すでに売り出した製品は好評で、業績を伸ばしている。
 河野テーラーが独自に販売しているのは、ポリエステル主体の「2way」やメッシュの生地に絵柄をプリントした勝負服で、仕上げ方は【図】の通り。異なる色の生地を重ねて縫い合わせている従来のタイプは1枚300グラムほどだが、新たな製法による2wayは220~230グラム、メッシュは150グラムで、大幅な軽量化に成功した。
 1924(大正13)年創業の同社は全国で数少ない勝負服の製造メーカーで、中央競馬の調教師約200人のうち約150人と取引がある。しかし、7年前の震災と原発事故発生直後、東日本地区での競馬が中止となり、風評の影響を受けて、年間800~900枚あった売り上げが半減。河野さんは、それまでつながりがなかった地方競馬に売り込みをかけた。
 各地のホースマンから「福島頑張れ」と激励される一方、意外な声を耳にした。「とにかく軽い勝負服を作ってくれないか…」。競馬のレースはそれぞれ、馬が背負う重さが決められている。騎手は厳しい体重管理が求められるが、中央競馬に比べ地方競馬では、減量に苦しむケースが多いと知った。水を飲むのを我慢し、レース直前までサウナに入るジョッキーもいるという。何とか力になりたい。職人の魂に火が付いた。
 しかし、軽量化できる当てはなかった。途方に暮れていたころ、町内会の顔なじみだった「安彦染工場」統括部長の竹内潤一さん(49)から、「昇華転写」の機械を導入すると耳にした。データ化した絵柄を生地に直接、プリントすることが可能だという。ひらめいた。色の違った生地を重ね縫いするのではなく、絵柄が印刷された生地を縫い合わせれば勝負服は軽くなる。即座に竹内さんに協力を求め、二人の挑戦が始まった。
 どのような生地が昇華転写に合うのか。試行錯誤を繰り返した。色合いを美しく出すのにも苦労した。完成品ができるのに一年ほどを要した。
 「この勝負服があれば、水が飲める」。必死の思いで体重を落としている騎手は朗報に笑顔を見せた。現在、河野テーラーの中央競馬向けの生産量は震災前に戻った。さらに、軽量タイプを年間100着ほど全国の地方競馬向けに販売している。
 河野さんは「今年は福島競馬場開設100周年の節目の年。良質な勝負服を提供し、レースを盛り上げたい」と言葉に力を込める。竹内さんは「河野さんに協力する過程で、昇華転写の機械の取り扱いに慣れた。とても勉強になった」と振り返っている。

※競馬の勝負服 レースの際に騎手が着用する服で、一般的に勝負服と言われる。中央競馬の場合、馬主によって異なり、現在約1900種ある。色、模様ともさまざまで、標準色は13色(赤、桃、黄、緑、青、水など)。模様は輪、一文字、帯、山形(ひし山形、のこぎり歯形)などがある。競走中に各馬を判別しやすいよう、模様のサイズが決まっており、似たような服色は登録できない。

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【図】
【図】
昇華転写でプリントされた勝負服の生地を持つ河野さん(右)と竹内さん
昇華転写でプリントされた勝負服の生地を持つ河野さん(右)と竹内さん

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