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【熊本と福島】手を携え風化を防ぐ(4月17日)

 最大震度7を2度観測した熊本地震から2年が過ぎた。震災関連死は大分県を含め13日までに212人となり、直接死の4倍を超えた。熊本県内の震災関連死は年齢別に見ると60代以上が9割を占め、自ら命を絶った16人も含まれる。東日本大震災から7年がたち、東京電力福島第一原発事故の避難を含む震災関連死が増え続ける本県にとっても見過ごせない問題だ。風化させないため、発信し続けなければならない。
 本県の震災関連死は富岡町が先頃、新たに2人を認定し、県全体で2227人となった。地震や津波による直接死の1605人を上回る。避難先での生活環境の変化による心身の負担、長期的なストレスが影響していると指摘されている。
 関連死が最も多い南相馬市では、市社会福祉協議会の生活指導員が見守り活動を続けながら、各地の避難者に悩みを聞き、寄り添う。こうした地道な取り組みの継続が少しでも関連死の食い止めにつながることを望む。
 熊本県内では依然約3万8000人(3月末時点)が仮設住宅での生活を続け、政府は入居期限を1年延長した。災害公営住宅などの建設は遅れ気味で、恒久的な住まいの確保が大切だ。しかし人手不足や資材高騰で入札不調に終わるケースが相次いでいる。
 建設作業員の不足は本県も同様だった。整備が遅れ、高齢者らが見知らぬ土地で暮らすことに不安を抱くミスマッチも生じた。生活再建に立ちはだかった教訓を熊本での復興施策に生かしてほしい。
 福島、熊本両県で震災関連死をこれ以上、出さない手だてを関係機関は早急に講じなければならない。被災者の「心の復興」に向け、より手厚い予算を国に求めたい。
 行政が個人情報の保護を優先するあまり、被災者情報を提供しない実態があるとされる。これではボランティア団体などの横の連携が難しくなる。非常時には行政は柔軟な対応を取るべきだろう。
 政治学者で熊本県立劇場館長の姜[カン]尚中[サンジュン]さんは熊本地震の前震に遭遇した。その経験と原発事故を踏まえ本紙連載「7年の視座」で、「局地的な問題としてローカル化しようという力が働いている。(中略)その目に見えない力が最大の問題だ」と警鐘を鳴らした。福島、熊本で多くの人が苦しんでいる歴史的な背景が垣間見えた。局地的問題であろうはずはない。
 復興には財源もスピード感も必要だ。福島と熊本は手を携え、国に物申していこうではないか。(浦山文夫)

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