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【産業振興】目線を東南アジアへ(5月16日)

 人口減少という大きな課題を背負い、地方経済を取り巻く環境は今後、さらに厳しさを増す。地元企業と連携し、新たなビジネス展開を探る努力も大事だが、さまざまな面で活路を海外に求める取り組みも必要になる。日本から比較的近く、6億人を超す人口を抱える東南アジアは魅力的な市場と言える。人件費は中国に比べ総じて安く、経済は急成長を遂げている。投資環境は整いつつある。
 東邦銀行によると、東南アジア諸国には県内から180社ほどが進出した。現地法人を設けて衣料や電子部品などを生産し、日本に持ち込むという従来型のビジネスモデルにとどまらない新たな動きが出始めている。郡山市の鉄製橋梁[きょうりょう]製造「矢田工業」はベトナムに現地法人を設け、公共事業の受注を目指している。日本国内での発注が先細りするとみて、インフラ整備が加速するベトナムに事業を広げた。果敢な挑戦と評価できる。
 一方、南相馬市を拠点に置く内装業「トラストワン」はインドネシアに事務所を設け、先端技術を学んだ現地の大卒技能者を採用した。日本国内の商業施設のデザイン、設計などを任せている。
 県内企業にも東南アジアへの輸出拡大をはじめ、域内での商品製造から販売までの流通システム構築、日本国内で人手不足が深刻化する中での人材確保など、幅広い可能性が眠っていそうだ。
 ただ、海外事情に詳しい経済関係者は「現地で操業するに当たっては困難も多い」と訴える。「工場を建てるまで、許認可手続きに予想以上に時間がかかった」「行政側の担当者によって法解釈がばらばらで困った」といった声も聞かれる。海外展開の水先案内役として、中小企業にとって身近な存在である地域金融機関の責務は重くなる。福島、郡山、いわき、会津若松市など県内に支店を置く常陽銀行(本店・水戸市)は今年3月、海外4カ所目となる駐在員事務所をベトナム・ハノイに開設した。東邦銀行はタイ、ベトナム、シンガポールの金融機関に行員を派遣し、県内関係企業の現地での口座開設や資金調達、販路拡大などを支援している。こうした動きが一層広がるよう期待したい。
 バブル崩壊後、日本経済は長期にわたり精彩を欠いてきた。企業の経営モデルが高度経済成長期のスタイルを脱し切れていないことも一因だとの指摘がある。情報通信の発展によるグローバル化、規制緩和などにより環境は激変している。今こそ、幅広い視野が大切だ。(菅野龍太)

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