あぶくま抄・論説

論説

  • Check

【廃炉視察者】地域振興に生かせ(5月17日)

 過酷事故を起こした東京電力福島第一原発の2017(平成29)年度の視察者が1万2000人を突破した。人数は年々、増加しており、東電は現状を広く知ってもらうため2020年度までに年間2万人に増やしたい意向だ。ただ、わざわざ浜通りに足を運んでくれる人たちを廃炉の現場を見せただけで帰していいものか。被災した市町村などに誘導し、地域振興に生かす仕組みづくりが必要だ。
 東電によると、視察者は当初、事故対応などに当たる専門家らが中心で年間千人に満たなかった。その後、放射線量の低減や安全対策などの環境整備が進んだことで、さらなる受け入れが可能になり、2014年度には5000人、2016年度には1万人を超えた。2017年度の視察者の内訳を見ると、海外を含め県外の人が7割を占めている。
 こうした流れを踏まえ、東電はこれまで実施していなかった土曜日に視察枠を新設したり、地元の自治体や自治会を積極的に受け入れたりしている。2016、2017両年度には大学生や高校生ら計約1400人も原発構内に入っている。今後も教育関係者と連携を強め、次代を担う若者らの視察を拡大したいという。
 東電にしてみれば廃炉・汚染水対策や安全管理について国内外の各界各層にアピールする絶好の機会と捉えているのだろう。確かに現場に足を運び、自ら作業の様子を確認するのは極めて有益だ。ただ、それは廃炉に限った話ではない。避難指示が出された地域の復興の様子などを併せて見て回ることで未曽有の災害と復興の歩みについての理解が深まるはずだ。いらぬ風評の払拭[ふっしょく]はもちろんホープツーリズムなど新産業の創出にもつなげられるだろう。
 富岡町で先月あった関係機関・団体と東電などによる廃炉・汚染水対策福島評議会で地元首長から廃炉と周辺自治体の復興状況をセットで視察できる取り組みを考えてほしいとの要望が出た。東電は視察者の意向に応じて対応しているそうだが、限界もあるようだ。国や県、関係市町村が連携・主導し、視察者に被災地を巡ってもらう方策を講じねばなるまい。
 視察受付の総合窓口を設置し、日程に応じた視察ルート、宿泊・休憩施設、ガイドの紹介、土産品・特産品のPRなどを担わせることはできないか。こうした仕組みができれば、今夏再開するJヴィレッジや2020年をめどに整備される復興祈念公園、アーカイブ施設の有効活用にも役立つだろう。(早川正也)

カテゴリー:論説

論説

>>一覧