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【地方が作る文書】国の向き合い方を問う(5月25日)

 学校法人「加計学園」の学部新設を巡って、地元の愛媛県が国とのやりとりをまとめた文書は、政府と国会を揺るがしている。学部の設置認可は国の権限であり、事の正否や、いきさつを明らかにする主たる責任は国側にある。
 県や市町村の文書の中身が政府や国会の議論の対象とされる事態に対して、本県も関心を寄せる必要がある。東日本大震災と東京電力福島第一原発事故に伴い、多くの事業が国、県、市町村の話し合いによって県内各地で行われている。原発の廃炉には数十年という長い年月が見込まれる。事業の経緯や内容を示す資料が的確に作られ、後世に伝える仕組みが十分に整っているかを確認するべきだ。
 愛媛県は交渉の様子を記した県職員の備忘録や、首相官邸で受け取った名刺などを先に公開し、21日には国会に新たな文書を提出した。一般的に、国と地方自治体の交渉の途中経過は、外部にはすぐに明かされない事例が多い。立ち会った職員が出席者の発言内容をメモや備忘録として手元に残しても、公文書に当たらないときには、原則として公開の対象とされない場合があるといわれる。
 県や市町村は普段の要望活動や陳情の際に、国への表立った批判や、国と対立するような言動は控える。これまでの役所の常識から見れば、物証を公にする愛媛県の姿勢は異例といえる。
 愛媛県の文書に対する国の対応の背景には、地方との関係をかつての「上下」や「主従」と捉える意識が一部に残り、地方の声を丁寧に聴く努力を怠ることにつながっているのではないか。全ての関係者は対等の立場で真相を解き明かし、国民に説明する責任を負っている。国が愛媛県とどう向き合うかに、全国の自治体は注目してほしい。
 本県の懸案である原発の廃炉、中間貯蔵施設の整備と管理運営、除染と復興の各事業は国の主導で進められたり、国の権限や予算に関わったりしている。国、県、市町村はさまざまな協議を積み重ね、膨大な記録や資料を持つ。県は震災と原発事故に関わる公文書については、保存期間の満了後もすぐには廃棄しないで、保存期間を延長し、当分の間、保管している。
 国も県も市町村も、公文書には当たらない職員個人のメモなども含めて、文書や資料の管理状況を点検する取り組みを求められよう。
 国と地方の間だけでなく、県と市町村、行政と民間との間で、文書の内容に行き違いがないかを常に確かめる努力が大切だ。(安田信二)

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