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線量減へ間伐、植樹 6月10日全国植樹祭

 「豊かな自然の中で、また子どもたちと一緒に森林学習を楽しみたい」。川俣町の山木屋小緑の少年団育成会長を務める広野敏男さん(67)は同校の学校林「第二親子の森」で思いを語る。スギやケヤキを植え、山菜、キノコ採りに歓声を上げる児童の姿が目に浮かぶ。東京電力福島第一原発事故発生後、住民の避難で荒れ果てた森はかつての姿を取り戻しつつある。
 環境回復の柱となるのは2016(平成28)年度に始まった国の里山再生モデル事業だ。約2ヘクタールの森林の一部で1年半かけて間伐や下草の除去、遊歩道整備などが進む。広野さんは古里の山の再生を喜びながら、県内でも先進的な活動をしていた緑の少年団の“復活”を思い描く。

 原発事故発生後、環境省は森林除染について生活圏から20メートル以内の範囲などを主に除染する方針を示したが、それ以外の場所の対応は不透明だった。県土の7割を占める森林の環境回復はどうなるのか-。林業関係団体や自治体からの懸念の声を受け、復興庁、環境省、農林水産省が協議し、2015年度に人が立ち入る「里山」の放射線量低減や環境再生の手法を探るモデル事業の実施を決めた。
 「第二親子の森」は住民避難によって人の手が入らなくなり、雑木が生い茂った。2016年9月にモデル事業地域に選ばれ、緑の少年団の活動再開を目指した環境づくりが活発化している。
 事業は同年12月に始まり、雪害によって倒れた木の伐採やスギの間伐などで森林の環境を整えた。広範囲に下草を刈り、ケヤキを植える場所を確保した。人が散策できる遊歩道をはじめ、のり面整備にも取り組んでいる。他の相双地区などのモデル地域の情報を得ながら成果を取り入れ、効率的な森林環境回復に向けた方法を確認している。
 国や町は今後、植えた苗木を枯らさないようにするため、環境への影響に配慮した最適な除染方法を本格的に検討する。広野さんは「里山が生まれ変わるための手法の先進事例になれば」と期待する。

 モデル地域は避難指示区域が設定された市町村を中心に里山14カ所が選ばれ、放射線量低減など事業の効果が表れ始めている。国は2019年度を目標に里山再生の手法を取りまとめ、普及させる考えだ。全県的にも県や市町村による間伐や森林作業道の設置を通じて環境回復の兆しが見えている。
 ただ、復興・創生期間が終わる2020年度以降の具体的な取り組みは依然として見通せない。森林関係者からは「里山を含めた森林の環境回復に向け、国が引き続き前面に立ってほしい」と切実な声が上がる。県も中長期的な財源の確保を求めている。
 県内では原発事故発生後、森林整備が停滞するとともに森づくりの体験施設を訪れる人が減るなど森と人との関わりが少なくなったとされる。広野さんは今こそ、人と森の絆を取り戻す活動が大切だと訴える。「子どもの数は減っているが、豊かな自然に触れ、自ら守る意識を育てられる場所が今後も必要だ」と話す。

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第二親子の森で植樹された木を見つめ、将来の姿に思いをはせる広野さん=川俣町山木屋地区
第二親子の森で植樹された木を見つめ、将来の姿に思いをはせる広野さん=川俣町山木屋地区

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