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15歳になる前に(6月17日)

 今年になって、性行為などで感染する梅毒の患者が急増しているというニュースに驚いた。国立感染症研究所によると、平成29年の患者報告数は現行の集計となった11年以降で初めて5000人を突破したと報道された。
 平成17年、福島県の10代の人工妊娠中絶率が全国2位となり、福島県教育委員会の仕事として、10代の性教育に取り組んできた。事態は改善したが、今でも、夏休み前のこの時期は、当時、医師会や厚生労働省のエイズ予防班から頂いたデータを持参して、中学校や高校に講演して回っている。
 その当時に得た調査研究によれば、性感染症や中絶等で病院に来る10代のこどもの最初の性交体験年齢のピークが15歳であり、予防教育のためには、15歳になってから、つまり、中学校3年生や高校1年生では遅いと気づいた。
 この研究で最も大切な成果が、全国の中学生に実施したアンケート調査結果である。その調査結果によれば、中学生になるまでに、「大切にしてくれる大人がいる」と実感することが、その子の性関係を容認する意識や性行為そのものに歯止めをかけられることが分かった。今も、この点を強調しながら、大人に向かっては、こどもを大切にして下さいとお願いし、こどもに向かっては、あなたが生きているだけで、こうして講演を聴いてくれるだけで、大切にされているのだよと伝え続けている。
 その時、いつも願うのが、こどもにとってこの大切にしてくれる大人が、保護者である親であることだ。文部科学省の仕事で『思春期のこどもと向き合うために』という家庭教育資料を作成した時、同じ作成委員である家庭裁判所の調査官から、「キレているこどもの背景には、必ずキレている大人がいる。そして、殺人を犯してもこどもは親だけは自分を見捨てないと待っているが、問題行動を起こしたこどもの多くの親が、簡単にこどもを切る」と、家庭教育の課題を突き付けられた。
 平成29年12月13日に放送されたNHKクローズアップ現代+「夫婦げんかで子どもの脳が危ない!?」では、夫婦げんかがこどもの脳を傷つける原因になる-という研究結果が明らかになった。福井大学とハーバード大学がアメリカ人を対象に行った調査では、日常的に両親の暴力や暴言に接してきたこどもたちは、脳の視覚野の一部が萎縮していた。記憶力や学習に影響が出る可能性もあるという。福井大学などが行った脳科学的な研究によって、そのメカニズムが明らかになった。日常的に夫婦の暴言に接すると、脳の海馬や扁桃[へんとう]体に異常を来し、怒りや不安を感じやすくなる上、視覚野の一部も萎縮し、記憶力や学習能力が低下してしまうというのだ。
 夫婦の冷戦状態も「ネグレクト」になり、こどもの脳の発達に深刻な影響を及ぼすことも報告されている。夫婦は他人だが、こどものDNAの半分は母親から、半分は父親からのものだ。夫婦げんかは、DNAレベルでこどもを傷つけていることを告げ知らせたい。(桜の聖母短期大学学長 西内みなみ)

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