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テレサ・テンの古里(6月19日)

 三島町の宮下温泉ふるさと荘の2階に客室「まんさく」がある。畳敷きで落ち着いた雰囲気が漂う。窓を開けると只見川の絶景が飛び込む。旅人の感動が最高潮に達する。「アジアの歌姫」といわれた歌手の故テレサ・テンさんも眺めたと思うと、なおさらである。
 日本デビューから間もない1977(昭和52)年3月、新曲「ふるさとはどこですか」の宣伝で訪れた際に泊まった。町が都会の住民と一緒に地域づくりに取り組んでいると知り、滞在中に特別町民となった。台湾出身の彼女は複雑な生い立ちを背負い、心の古里を求めていたという。
 町を離れる際、旅館前にシラカバを記念に植えた。3年後に道路工事が行われ、残念ながらその場所に今は木が残っていない。寂しい限りだが、シラカバは町内の美坂高原に根付いていた。町民がひっそりと移した。絆を守るためだった。
 手首ほどに細かった幹は直径50センチとなった。樹高も天に届けとばかりに約20メートルまでに育つ。40年の時の流れを感じる。町はテレサさんとの縁を生かした観光事業を始める。国内で三島ほど足跡が残る場所は、珍しいとされる。歌姫の記憶に出合える。心の古里は色あせない。

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