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忘れてならない事件(7月7日)

 一九九五(平成七)年三月二十日は春うららかな一日だった。だが、無差別テロの発生に、多くの人が表情を曇らせた。都心で起きた地下鉄サリン事件は未曽有の大惨事となる。
 オウム真理教の教祖麻原彰晃を名乗った松本智津夫死刑囚ら幹部七人の刑が執行された。坂本堤[つつみ]弁護士一家殺害、松本サリン、公証役場事務長監禁致死…。さまざまな犯罪を企てた。事件は県内にも及ぶ。一九九五年、幹部が潜む可能性があった。県警本部は山間部で大掛かりな捜索を繰り広げた。
 松本死刑囚は地下鉄サリンから二カ月後に逮捕された。翌年、東京地裁で公判が始まる。意味不明な言動を繰り返した。その後は沈黙を通す。家族や弁護士とも意思の疎通ができなくなる。真相は明らかにならなかった。「真実に迫ることができなくなって本当に残念」。被害者の一人が悔しさをにじませる。
 あの日から二十三年が過ぎた。ある遺族は人生を振り回され、死刑執行の日を待っていた。「その時が来たという思いだ」。重い後遺症に苦しむ人が、いまだにいる。風化が進むのでは-との声もある。しかし、教団が起こした数々の凶悪な行為を決して忘れてはいけない。

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