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本当のぜいたく(7月10日)

 創業百五十三年の歴史を誇る福島市の老舗納豆店「大文字屋本店」が、六月末でのれんを下ろした。総務省によると、市民一世帯当たりの年間購入額は「日本一」だけに意外に思う人もいるだろう。
 福島市の消費量はなぜ多いのか。全国納豆協同組合連合会の担当者は「理由がよく分からない」と話す。ただ、学校給食で数多く提供しているためではとみる。ライバルの水戸市と比べて、生活に自然になじんでいるとも評する。
 地場の製造店の苦戦は他の地方都市も当てはまる。県内で全国連合会に加わるのは五社のみとなった。約四十年前には六十社ほどあった。店を閉じた老舗は東京電力福島第一原発事故後に売り上げが半減したのが原因の一つなのだという。高速道路や流通網の発展で大手食品会社の攻勢が強まっていることも背景にある。だが、地域ごとに味が違う商品のおいしさを楽しむ機会は、なくなってほしくない。
 今は大量に生産し、多くの消費者に届ける。その土地ならではの食を楽しむのは難しくなりつつある。七月十日は語呂合わせで「納豆の日」となっている。力いっぱいかき混ぜながら、昔ながらの味の貴重さに改めて気付かされる。

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