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懐かしい「顔」(7月17日)

 懐かしい「顔」が戻ってきた。福島市を走る福島交通飯坂線の電車「7000系」の前面に、六月末から青色の帯が復活した。四年ほど特産品の桃を思わせるピンクの帯をまとっていた。
 鉄道ファンには知られた名車である。誕生から半世紀余りがたつ。元々、東京都内などに路線を持つ、東京急行電鉄(東急)で使われていた。福島は、いわば第二の職場となる。鋼鉄製が主流だった外板や骨格の全てに国内で初めてステンレスを採用した。銀色に輝く見た目の新しさや腐食しにくい特長が注目された。後に普及した全面ステンレス製車両の先駆けとなった。
 飯坂線では東急から譲り受けた六編成、十四両が一九九一(平成三)年から活躍した。現在は二編成、四両を残すのみとなった。老朽化が目立ち、来年春までに引退する。青帯の再登場は一線を退く前に往時の姿に戻し、ねぎらおうという福島交通の粋な計らいだった。
 窓や扉、つり革は昭和の雰囲気を感じさせる。天井には今では珍しい扇風機が回る。歩みは高度経済成長期と重なる。多くの人の夢と希望、喜びや悲しみを運んだ。色あせた椅子に体を預けてみよう。思い出の数々がよみがえる。

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