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【一本の水路】伝えたい安積開拓の志(7月23日)

 郡山市の十のロータリークラブ(RC)は、安積疏水開削事業と安積開拓の軌跡を描いたアニメーション「未来を拓いた一本の水路」を作った。日本遺産に認定された偉業を、子どもたちを中心に、分かりやすく伝えるのが趣旨だ。市内の小・中学校や公共施設などで活用してもらうため、近くDVDを市教委などに寄贈する。開拓者精神を継ぐ人材の育成をはじめ、産業振興や観光などに幅広く生かせるよう期待したい。
 アニメは明治時代の初め、原野だった現在の郡山に廃藩置県で失業した士族の入植を進め、開拓に情熱を注いだ人々や、大地を潤すため猪苗代湖の水を引く難事業に挑んだ経緯を描いている。RCが県地域創生総合支援事業の採択を受けて、三春町の福島ガイナックスに制作を依頼した。
 政府で安積開拓に最も熱心だった大久保利通や現地の指導者、民間の力で支えた開成社を設立した商人ら歴史上の人物が、親しみやすい姿で登場する。志半ばで暗殺された大久保の夢は引き継がれ、国内外の技術を駆使し、名もない農民らの奉仕作業などによって実を結ぶ。ゆかりの人や場所の紹介を含めて十五分弱の作品は、子どもから大人まで学べる内容だ。
 安積疏水の実現に貢献したオランダ人土木技師、ファン・ドールンにまつわる逸話も盛り込まれた。第二次世界大戦中、猪苗代湖の十六橋水門に立つ銅像が砲弾用に調達されそうになった際、疏水の利用者が銅像を土に埋め、難を逃れた。話は「隠されたオランダ人」として広まり、国際親善に役立ったとされる。
 郡山市では小学三・四年生の郷土を知る副読本で安積開拓を取り上げている。市教委関係者は、子どもたちがアニメ化した物語に関心を持ち、理解が深まると期待する。公民館や図書館に備えたり、駅や大型商業施設の協力を得て映像を公開したりすれば、多くの人に開拓の意義を知らせることも可能だろう。
 郡山市は「一本の水路」を開拓者精神の象徴として、挑戦、多様性、共生のイメージを持つ優れた商品や、地域活性化などに励む団体に対するブランド認証事業を始めた。今月末に締め切られる第一回募集は産品、活動両部門に約十件ずつ応募があるという。認証後は「一本の水路」をデザインしたマークの使用が許され、推進組織がPRや受託販売などを行う。
 官民を問わず、先人の志と成果を引き継ぎ、より高めることで、新たな産業の創造や魅力あふれる地域づくりにつなげてほしい。(浅倉哲也)

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