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【避難地域の原風景】有形無形の証しを残す(7月25日)

 東京電力福島第一原発が立地する大熊、双葉の両町の原風景は中間貯蔵施設の建設や、復旧復興事業に伴って大きく変わろうとしている。
 住民は歴史や文化に関わる有形無形の財産をよりどころに、故郷とのつながりや誇りを確かめる。地域の歩みと営みを示す証しや、懐かしい情景、豊かな生態系を後世に伝える努力が大切だ。国、県、町、住民が一緒に調べ、守る仕組みを整える必要がある。
 貯蔵施設の用地の中で、埋蔵文化財の包蔵地は六十カ所程度ある。このほか、大熊町教委から国に出された資料によると、配慮すべき文化財(手を加える時に町教委に連絡を希望する文化財)は、貯蔵施設の用地内に二十六カ所、用地の周辺を含めると三十三カ所を数える。
 双葉町教委は二〇一五(平成二十七)年に、貯蔵施設予定地内の埋蔵文化財などの保護と保存の基本方針を定めた。予定地の埋蔵文化財は三十五遺跡、神社および堂宇は六カ所で、そのほかに石仏などの文化財の所在地が数カ所ある。埋蔵文化財は八カ所の新発見の遺跡が確認された。
 双葉町教委は町文化財調査委員会とともに石碑や石仏の所在を確認し、保存対策を検討している。大熊町内では町民有志の団体が震災前に石碑などを調べ、震災後に町教委が津波や揺れによる被害を確かめた。空間線量が高い場所に残されたり、資料そのものの線量が高い事例が見つかったりした。原発事故に伴う特別な対策が求められよう。
 国は、土地の改変を伴う土壌貯蔵施設が重要な埋蔵文化財にできるだけ掛からないように配慮している。埋蔵文化財の現地調査(分布調査)は、国が取得済みの用地について、着工前に県教育庁文化財課によって実施されている。必要に応じて試掘や確認調査を進め、本発掘調査は文化財保護法に沿って対応している。また、双葉町の予定地内にある神社で神楽が奉納された際には住民の一時立ち入りに必要な協力に当たった。
 除染や解体作業の加速で個人所有の文化財の運び出しが増えている。双葉町歴史民俗資料館や大熊町民俗伝承館の資料は、県文化財センター白河館の仮設収蔵庫に保管されているが、収蔵空間の限界が近づく。職員の確保や保管施設の整備が課題といえよう。
 消えゆく集落や民家の調査に加え、生業[なりわい]や、それに用いた道具類の収集と記録も大切だ。また、信仰、祭礼、芸能、儀礼を伝える取り組みが欠かせない。文化財、民俗、動植物の生息を総合的に調査するべきだ。(安田信二)

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