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【Jヴィレッジ】県民の宝として活用を(7月26日)

 Jヴィレッジが二十八日に再始動する。復興のシンボルとして、被災地の交流人口拡大という新たな役割への期待が高まる。貴重な施設を「県民の宝」として有効に活用するべきだ。
 一九九七(平成九)年、国内初のサッカーナショナルトレーニングセンターとして開所した。ワールドカップ(W杯)の代表チーム合宿に度々使われる。二〇一一年の東日本大震災の後は、東京電力福島第一原発事故の収束に向けた対応の拠点だった。
 四十九ヘクタールの広大な敷地に、天然芝八面と人工芝三面のピッチを備える。このうち、五千人収容のスタジアムを含む七面の利用を二十八日に開始する。今秋には、日本初のピッチ一面を収容する全天候型練習場など二面を供用し、天然芝二面の養生を待って来春に全面再オープンとなる。休業前より全体のピッチ数は一面減ったが、使用時間に制限のない人工芝を二面増やし、利便性を高めた。
 宿泊施設を充実させた。新たに百十七室を設け、客室数は二百となった。新宿泊棟最上階の八階には太平洋を望む大浴場がある。コンベンションホールや研修室に加え、アリーナやプール、フィットネスジムも備える。
 全面営業再開後の年間来場者目標を六十万人に定めた。過去最高は、日本代表がW杯前に合宿した二〇〇六年度の五十七万七千人であり、決して容易な目標ではない。従業員は集客率の向上に知恵を絞っている。復興事業に携わるビジネス客に狙いを定めたホテルの新たな需要の開拓、サッカー大会をはじめとする主催事業に活路を見いだす。
 Jヴィレッジ自らの営業努力を礎に、地域との連携で利用価値を高める必要がある。地元の楢葉町と広野町は、公園やスポーツ施設が充実している。来春には楢葉町にプールとアリーナを備えた屋内体育施設が完成する。それぞれの施設が単独で利用を呼び掛けるよりも、地域一帯となって相互利用をPRした方が、より効果は高まる。近隣の自治体とも協力し、被災地の復興を発信するホープツーリズムの拠点にもすべきだ。
 県と立地両町、株主の日本サッカー協会などは利活用策を探る検討会を設ける。いわき市北部の商業、観光施設などは、すでにJヴィレッジも参加する「NSC(ノース・サンシャイン・コースト)協議会」を組織し、回遊策や共同での情報発信を模索している。育ちつつある連携の動きを広げ、加速させよう。Jヴィレッジの再興が地域の振興につながる。(鈴木俊哉)

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