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【災害日本と外国人】安全こそ「おもてなし」(7月27日)

 訪日外国人客(インバウンド)誘致に沸き立つ日本は、地震、豪雨、異常高温など自然災害多発国でもある。外国人に被害状況や避難場所など必要な情報が届かず、不安を与える事例が全国で起きている。安全を保障し、無事帰国させるのは迎え入れた日本の責任だ。東京五輪・パラリンピックまで二年。増加する外国人の安全対策に万全を期す必要がある。
 六月の大阪北部地震では関西観光を楽しむ外国人に動揺が広がった。「どう行動すればよいか指示してもらわないと分からない」「駅の放送が早口の日本語で聞き取れなかった」などの声が相次いだ。
 大阪府はウェブサイトに英語、中国語、韓国語で「危険な場所に近寄らないように」と注意喚起の文章を載せた。府と府国際交流財団は多言語支援センターを設け、電話と電子メールで相談窓口を開設したが、問い合わせは少なかったという。「窓口の存在そのものが知られていない」と反省の弁が漏れた。
 地震や津波を知らない外国人は多い。災害の少ない国から来る人もいるのだから、やむを得ない。机の下などに身を隠す、高台に避難するといった日本人にとって当たり前の基本動作を思いつかない。災害への感覚が異なる点を理解し、丁寧な説明を心掛けなければならない。
 だが、言語の壁が立ちふさがる。聞き慣れた日本語が通じると限らない。罹災[りさい]証明は「建物がどれくらい壊れているか書いてある紙」、給水車は「水を配る車」、住宅補修は「家を直す」…。二年前の熊本地震で外国人に対応した熊本市の関係者は言葉の意味をかみ砕き、漢字に読み仮名を付けて伝えたという。
 観光庁は外国人の安全対策を打ち出している。観光・宿泊施設向けに初動対応マニュアル策定ガイドライン、行政には手引きを作成し、官民挙げた態勢強化を促している。外国人向けに多言語対応の情報発信アプリをつくり、利用を呼び掛けている。それでも最近の災害では混乱と動揺を抑えることができなかった。課題を洗い出し、情報伝達の速度と内容を向上させていくべきだ。情報弱者が災害弱者となってはならない。
 東日本大震災と東京電力福島第一原発事故からの復興途上にある本県も外国人誘客に熱心に取り組む。一方で災害発生時の対応まで手が回っていないのが現状だ。行政が国際交流団体や在住外国人と連携して、安全確保策の充実に努めてほしい。旅先での安全安心こそ最高の「おもてなし」となるはずだ。(鞍田炎)

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