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【原発題材演劇公演】半世紀の歴史から学ぶ(7月28日)

 浜通り地方にどうして原発が造られたのか。一九六一(昭和三十六)年の双葉町を舞台にした演劇が東京で公演されている。東京電力福島第一原発事故を題材に、半世紀に及ぶ歴史と人間模様を描く。首都圏をはじめ県外での事故の風化が懸念されている。演劇や映画などの芸術作品を通じ、福島の過去や現状についての理解が広がることに期待したい。
 演劇は「1961年:夜に昇る太陽」東京公演で、石川町生まれの劇作家で演出家の谷賢一さん(東京都)が手掛けた。今月七、八日のいわき公演に続き、二十一日から八月五日まで東京・駒場の「こまばアゴラ劇場」で開かれている。原発にまつわる三世代の歴史を描く三部作の第一弾となっている。二部と三部は来年に公演される。
 故郷双葉町を離れ、東京の大学に通う男子学生が主人公だ。卒業後は東京で就職する決意を告げるために実家に帰省した。原発立地を推進したい東京電力、県、町の関係者が実家を訪れ、金額を示して用地の売却を求める。田畑や家を手放すか、原発は安全か、家族の中でも意見が分かれる。
 作・演出の谷さんの父は元原発技術者、母は浪江町出身であり、「震災と原発事故後、自分のルーツの福島に向き合った作品を作りたかった」という。二年にわたって本県を訪れ、取材を重ねた。事実に基づいて物語を仕上げたという。「原発を通して、政治や経済、人々の暮らしがどう変わっていったのか。何が問題だったのか。見た人が、それぞれ考えてくれたらうれしい」と語る。
 東京公演二日目の二十二日、会場は満席だった。幅広い年齢層の観客の中で、二十代とみられる若者が目立つ。上演するのは谷さんが主宰する劇団「DULL-COLORED POP(ダルカラード・ポップ)」。浜通りの方言を使った劇団員の熱演に、大きな拍手が鳴り響いた。「貧しかった地方がまちの発展、生活のために原発を受け入れざるを得なかった、ということがよく分かった」「地方が抱える課題は今も同じで都会との格差は大きい」。見終えた大学生の感想だ。
 劇の後半、土地の売却について意見を求められて「僕には決められない」と語った主人公に対し、「忘れんでねえぞ。おめは、反対しねがった」と語った祖父のセリフが印象に残る。未来をしっかり見据えるとともに、過去を忘れないことが、復興を着実に進めていくうえで重要な意味を持つ。(真田裕久)

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