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【喜多方の地滑り】集水井の早期完成願う(7月31日)

 喜多方市高郷町揚津[あがつ]地区で地滑りの兆候が確認され、三カ月が過ぎた。阿賀川沿いの斜面に民家や棚田が点在し、以前から危険性が指摘されていた。とはいえ突然の災害に住民の不安は計り知れない。
 地盤に設置された伸縮計が一時間当たり四ミリ以上動くと、住民に昼夜問わず警報音で知らせた。近くに住む女性は警報音が気になり、寝不足気味になったという。市は保健師や民生児童委員らによる電話や個別訪問で住民の心のケアと健康管理に努めている。四十世帯ほどの集落は過疎が進み、高齢化率は高い。お年寄りの孤立を防ぎ、地域の絆が保てるよう継続的なサポートが必要だ。
 五月四日から通行止めが続く県道に代わる生活道の安全確保が求められる。県道の一部は一気に五メートルもの段差ができた。その光景を目の当たりにすると、段差がわずかなころに踏み切った車両規制は妥当な判断だ。山あいの集落にとって迂回[うかい]路は生命線となる。県は、車一台がやっと通行できる沿道の木々の伐採や除草、対向車の待機所確保など迅速に対応している。安心した住民は多い。
 地盤の動きは予想以上に大きく一時、最大で一時間当たり十ミリを超えた。地下水や沢水の排水作業が本格化すると、地盤の動きはほぼ収まり、効果があった。暫定的に地下水をくみ上げる深井戸は七カ所が完成し、地下の水量に応じていつでも稼働できる体制が整い、住民は心強い。
 ただし稼働している排水設備は全て仮対策であり、住民は恒久的な施設を望む。地滑り対策の中で最も効果があるとされる常設の深井戸「集水井[しゅうすいせい]」の建設は待ったなしの状況だった。事業費を捻出する農水省の「災害関連緊急地すべり対策事業」が決まり、三分の二を国、残りを県が負担する。県や市が、国に強く要望を続けたことで通常よりも短期間で事業が採択されたという。県や市が地元の声を丹念に聞き、強い危機感を共有した結果と言える。
 揚津地区は豪雪地帯だ。順調に作業が進めば十一月末までには二基ともに稼働する。住民は工事の中断が余儀なくされる本格的な降雪期前の一日も早い供用開始を願う。集水井は二基だけで地盤の動きを完全に止められるか。段差の大きい県道は別ルートが必要か。課題は多い。地盤の深さ、土砂量、地下水脈など、本復旧に向けてさらに多くのデータが必要との指摘もある。国、県、市は今、本来の姿を取り戻すためのスタートラインに立ったことを忘れてはならない。(小林和仁)

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