あぶくま抄・論説

論説

  • Check

【ふくしまの桃】産地を育てる消費者に(8月1日)

 県産桃の収穫が最盛期を迎えている。全国二位の生産量を誇る。JAふくしま未来によると、今年は糖度が高く、例年以上に「おいしい」という。主力品種「あかつき」に続き「川中島白桃[かわなかじまはくとう]」「ゆうぞら」などが時期を追って登場する。甘さや酸味、香りの違いを楽しみ、消費者として産地を盛り上げよう。
 農林水産省は二〇一七(平成二十九)年度に東京電力福島第一原発事故の風評払拭[ふっしょく]に向けて県産農産物の流通を調べた。二〇〇七年からの販売量や価格の変化を事業者、消費者への調査とともに分析した。その中に特筆すべき点がある。東日本大震災が起きた二〇一一年産について、首都圏と関西圏の卸売業者が「大玉で味も素晴らしい」「今までにないくらい品質がよく、味も量も最高だった」と高く評価した。首都圏では「販売先から現在でも『当時の大きさ、質のものはないか』との問い合わせがくる」と紹介されている。
 県やJAによると、二〇一一年は原発事故の影響による販売不振が懸念されたため、生産者は例年以上のおいしさを目指し、手間をかけて丁寧に育てた。産地の誇りを懸けた挑戦だった。
 二〇一一年八月、東京都中央卸売市場が取り扱った県産桃は四千六百三十一トンで、前年の二千四百二十一トンを大きく上回った。農林水産省は、それまで市場を通さずに生産者が直接販売していた分が流通したと分析した。直接販売は高価格の贈答用が多く、買い控えが影響したと推測される。平均価格は一キロ当たり百九十六円と前年の四百三十九円と比べ半額以下になった。生産者にとって厳しい状況だったが、復興への決意を込めて育てられた品質は今も多くの人の記憶に残っている。
 東京都中央卸売市場での毎年八月の平均価格は徐々に回復し、二〇一七年は一キロ当たり四百三円だった。生産量一位の山梨産は六百二十五円で、二百二十二円の差が出た。二〇一一年は二百五十二円だったため差は縮小したが、震災前の二〇一〇年の六十円、二〇〇九年の七十八円と比較すると、まだ大きな開きがある。今年七月中旬は前年より4%高い値を付けた。正念場となる八月の価格に期待が持てる。
 実態調査には産地の力強さを感じる数字がある。全国的に減少している栽培面積が本県はおおむね横ばいで推移する。出荷量シェアは山梨が減少傾向なのに対し本県は拡大傾向だ。日本一への道は、生産者と消費者が一緒になってこそ開ける。(三神尚子)

カテゴリー:論説

論説

>>一覧