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伝馬船(8月3日)

 いわき市のアクアマリンふくしまに木造和船「伝馬船[てんません]」がよみがえった。昭和の中頃まで沿岸の漁や、沖合の大型船から陸地への人と物の運搬に使われた。いわきは砂浜や磯場が多い。小回りの利く小舟の漁が主流だった。
 船体がプラスチック製に変わり、姿を消した。海に関わる文化や技を受け継いでいこうと、まちづくり団体などと復元に取り組む。震災の津波で先に完成していた三隻を失う。それでも諦めない。市内の船大工が記憶を頼りに木材の寸法を測り、のこぎりをひいた。全長六メートル、幅一・二メートルの舟は「海竜丸」と名付けられた。
 舟を生かした地域おこしの企画が持ち上がる。競技会開催の夢を描く。アクアマリンパークに面した海で速さを比べる。人々はかつての小名浜港の風景を思い浮かべる。多くの観光客を呼び込む。十一月の世界水族館会議、二〇二〇年の東京五輪・パラリンピックに向け、舟の数を増やしていく。
 施設内の工房では、二隻目の製作が始まった。少しずつ、組み上げられていく作業を見学できる。夏休みの自由研究の材料にもなる。舟が行き交った当時の暮らしを思い起こしてみよう。木の手触りから港町の歴史が伝わる。

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