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空しかった国会(8月5日)

 七月二十二日に長かった通常国会は閉幕した。しかしその結果は何と空[むな]しいことか。普通なら内閣退陣になるような問題がいくつもあったにもかかわらず、結局すべて安倍内閣の思惑通りになったのである。
 森友学園と公文書改ざんの問題で辞任を要求する声がどんなに大きくても、まったく平然として責任を官僚に押し付けた麻生太郎財務大臣をはじめとして、政治家は誰も責任を取らなかった。官僚たちは内閣の顔色をうかがい、立証の難しい忖度[そんたく]に走ったが、後に結局人事異動の形で責任を取らされた。
 一方、働き方改革関連法やカジノを含む統合型リゾート実施法、参議院の定数を六増やし、比例区に特定枠をつくる公職選挙法改正案などはすべて通した。
 これはもちろん衆参両院で与党が多数を占める現状が根本的な原因ではあるが、野党の力が結果としてはまったく成果を上げられなかったためである。野党がこのように弱体化したのは、実は小池百合子都知事が野党を解体させてしまったからである。小池都知事がどこまで意図したかはわからないが、本人の行動は失敗したといわれても、結果は安倍一強体制づくりに決定的に大きい影響を与えたのである。党首討論のあの情けないようなありさまが象徴的で、今後野党が大きい勢力になるか、強い協力体制にならない限り、国会はこれからも本来の機能を発揮できないだろう。これは民主主義の崩壊である。
 安倍内閣は多くの国民が気が付かないうちに、独裁体制をつくり上げている。官僚は人事権を内閣人事局に握られているし、司法も最高裁人事が首相によって決められている。特定秘密保護法など私たちの行動を縛る法律もできている。これからいよいよ憲法改正(悪)に向かって動くだろう。
 このところの新聞社や放送局の世論調査を見ていると、森友学園や加計学園のような道徳的な面が関わる問題になると安倍内閣の支持率は下がる。しかし政策的な面には関心をあまり持っていない人が多いようで道徳的な問題が下火になると盛り返す傾向がある。日本人は政治や政策に強い関心を持つことを頭では必要だとわかっていても、感覚的には避ける傾向があるように見える。「お上[かみ]」のいうことには逆らわない方がいいし、従っている方が安全という古い日本社会の伝統がまだ残っているのかもしれない。最近のスポーツ団体の独裁体制の問題にもそれは現れている。
 しかしいま多くの人々が政治に強い関心を持ってもらわないと恐ろしいことになるだろう。政府は甘い言葉と財政的な締め付けを使って沖縄をアメリカの軍事基地にすることに協力し、四千六百六十四億円の巨費を投じて、これから本当に必要とは思えないミサイルシステム「イージス・アショア」をアメリカから買うという。今後の日本の進む方向は軌道修正させねばと強く思う。
(小島美子・国立歴史民俗博物館名誉教授、福島市出身)

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