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語り継ぐ(8月6日)

 福島市の小学校五年の児童は、校内の図書館にある漫画「はだしのゲン」の全十巻を一カ月ほどで、全て読み終えた。
 原爆が投下された前後の広島市の様子が描かれている。原作者の故中沢啓治さんは七十三年前の八月六日、六歳だった。爆心地からわずか一・三キロの国民学校で厚さ三十センチほどのコンクリート壁のそばに立っていた。熱線を逃れ、奇跡的に生き延びる。
 原爆をテーマに漫画を描き始めた約五十年前、詳しい被害の実態などは日本人にもほとんど知られていなかった。その憤りが後にゲンの誕生につながる。描写は読者に配慮したつもりだった。それでも批判があったという。自らの著書「はだしのゲン わたしの遺書」(朝日学生新聞社刊)に「『こんなことは決して許してはならない』と思ってほしい」と記す。子どもたちへの願いが根底にあった。
 戦争の実体験を聞く機会は少なくなった。「はだしのゲン」は被ばく者の証言の一つとして、これからも世代を超え読み継がれる。どんな苦難があったとしても力強く生き抜く。作品にはそんなメッセージも込められる。夏休みに、親子でゲンについて語り合うのも大切な思い出となる。

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