あぶくま抄・論説

論説

  • Check

【会津医療センター】新派遣システムに注目(8月7日)

 会津若松市の福島医大会津医療センターは、歯科医師会と連携した全国的に例のない歯科医師派遣システムを構築した。入院患者の免疫力維持に欠かせない口腔ケアを地元の二つの歯科医師会が担う。二〇一三(平成二十五)年の開設から五年が経過し、独自性を強める会津医療センターの挑戦は全国の医療機関から注目を集めそうだ。
 歯科診療には、虫歯治療などを中心とする外来のほか、入院患者への口腔ケアなどの取り組みがある。病気と闘う患者の体内に細菌が入らないよう歯石の除去行為や歯周病予防は、地味ながら総合病院として重要な患者対応の一つという。これまで、会津医療センターは外来診察に時間を割かれ、理想とする入院患者の口腔ケアが十分にできない状況が続いてきた。
 会津医療センターは、歯科診療の専門医が今年三月で定年退職したのをきっかけに、外来を休診とした。懸案の口腔ケアの充実に向け、会津若松歯科医師会と耶麻歯科医師会の協力を取り付けた。別の病気を持つ患者への対応や経営する歯科医院を休まざるを得ないリスクなど課題は多かった。両歯科医師会は最終的に地域住民の健康のために貢献すべきと判断した。
 一部は新潟大の応援も受けられるようになったが、現在でも、十人ほどの歯科医師が交代で週二回、会津医療センターに通っている。治療に当たる歯科医師からは、貴重な経験が今後の自らの診療にも生かせるとの声が出ている。日本歯科医師会広報課は、総合病院が地元歯科医師会と連携するのは全国的にも先進的な事例と評価している。今後、同様の課題を持つ地域のよいお手本として広がりをみせる可能性を感じる。
 会津医療センターは、経営が悪化していた会津若松市の県立会津総合病院と県立喜多方病院を統合した。教育、研究、へき地支援など政策医療による支出があり、病院経営は県の支援を必要としている。だが、統合前の両病院の赤字の合計に比べて大幅な圧縮を実現している。
 二十六の診療科を持つ会津医療センターにとって、地元歯科医師会ばかりでなく、総合病院や医師会とより強い協力体制が築ければ、幅広く、きめ細やかな対応が可能となる。へき地医療支援では、積極的な取り組みで効果を挙げている。人口減少がさらに続く状況の中では持続可能な仕組みづくりが求められる。安定期を迎えた中核病院の十年先、二十年先を見据えた新たなモデルづくりに対する期待は大きい。(安斎康史)

カテゴリー:論説

論説

>>一覧