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【一極集中是正】国難として対応すべき(8月9日)

 東京圏(埼玉、千葉、東京、神奈川)への人口の一極集中が止まらない。総務省が先月発表した一月一日時点の住民基本台帳に基づく人口動態調査で浮き彫りになった。地方の衰退は国の存続に関わる「国難」と言える。政府は危機感を持って是正と地方の人口増に取り組むべきだ。
 調査結果によると、国内の日本人は一億二千五百二十万九千六百三人で前年より三十七万四千五十五人減り、九年連続のマイナスとなった。減少幅は前年を約六万六千人上回り、過去最大を更新した。本県は百九十万六千八百九十六人で一万九千八百五十五人減少したのをはじめ、四十一道府県で人口が少なくなっている。これに対して東京圏は計三千五百四十四万三千八十四人で国内の28%を占める。前年比では東京都の七万二千百三十七人増を最多に、いずれも増加している。
 地方創生に向けて政府が二〇一四(平成二十六)年に打ち出した「まち・ひと・しごと創生総合戦略」は、本社機能の地方移転に対する減税措置などを通して地方への移住や地元就職を促進し、二〇二〇年までに東京圏への転入超過を解消するとしている。しかし、急ごしらえの感が否めず、当初から戦略の実効性を問う指摘が出ていた。
 当面の対策として今年六月に閣議決定した「まち・ひと・しごと創生基本方針」では、二〇一九年度から二〇二四年度までの六年間で地方の就業者や起業家を計三十万人増やす目標を掲げている。六万人は東京圏からの移住者、残り二十四万人は地方在住の女性や高齢者らを想定し、地方創生交付金による移住者の住居確保や引っ越し費用の負担軽減、地方の中小企業に関する情報発信、金融機関と連携した女性や高齢者の起業支援などで達成するという。
 しかし、土台となる総合戦略自体が実質的に破綻しているのが現状だ。何ら成果がないまま目標ばかりが先行するようでは、基本方針の実現性とともに政府の本気度が再び問われる。
 県内は少子化、若者の県外流出など地方が抱える問題に東日本大震災、東京電力福島第一原発事故が重なり、人口減少が進んでいる。一方で、県外からの移住者を含む新規就農者は昨年度まで三年連続で二百人を超えている。当地の伝統工芸に引かれて県内に移り住んだ若者もいる。
 人口増の受け皿は企業誘致だけではない。農業をはじめ地方ならではの地場産業や伝来の文化を守り、発掘し、育てる政策も重点的に進めるよう求めたい。(五十嵐稔)

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