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朝河貫一没後70年(8月10日)

 本県が生んだ歴史学者朝河貫一博士の著書に「日本の禍機[かき]」がある。日露戦争後の一九〇九(明治四十二)年に出版された。日本は中国大陸に進出し、帝国主義の道を突き進もうとしていた時代だった。
 <今や日本は国運の分かれ目に立てるものなり>。日米開戦の危機を予言した書としても知られる。博士の警告もむなしく、祖国は世界から孤立して戦争、敗戦へと不幸な歴史をたどった。著作の多くが英文だが、唯一、日本語で書かれている。文語表現のため、今の人には少し読みにくい面がある。
 朝河貫一博士顕彰協会が現代文に訳した書籍を発刊して一年になる。原文を忠実になぞり、巻末では人となり、逸話を紹介している。福島市の事務局や郡山市の安積歴史博物館など県内四カ所で一冊千円で手に入る。書店に並んでいないせいか、この本を知る人は少ない。関係者は「若い世代も、ぜひ手に取って読んでほしい」と願う。
 十一日は博士の没後七十年に当たる。名著をひもとく良い機会でもある。北朝鮮の核とミサイル問題、中国の海洋進出、トランプ政権の保護主義…。不透明な時代に、日本は世界とどう向き合うか。歴史の中から見えてくる。

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