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【「復興知」の活用】自治体も大学も本気で(8月11日)

 本県復興に役立つ大学など教育・研究機関の知力「復興知」活用の動きが広まっている。浜通りを新産業の先進地とする福島・国際研究産業都市(イノベーション・コースト)構想推進に向け、推進機構は七月、十四大学と福島高専の学術研究活動合わせて二十件を支援事業に採択した。自治体と連携を深め、地域の実情をしっかりと把握して活動を進めてもらいたい。
 支援事業は今年度から始まった。総額一億四千万円を補助する。東日本大震災後の復興に関する研究は、大学の自主財源に頼る部分もあった。財政面で支えることで、地域と一体となった展開や現地拠点の設置につなげる。
 採択事業はロボットや小型無人機「ドローン」に携わる人材の育成、新たな営農、まちづくり、健康管理など多岐にわたる。大学が培った研究の成果や技術に基づく「復興知」を生かす。地域再生に関わる大切な事業だけに、一過性で終わらせてはならない。専門性を生かしながら、地域住民に寄り添い、長期的に一緒に進めることが肝心だ。
 早稲田大は、二〇一七(平成二十九)年に広野町に開設した未来創造リサーチセンターでの活動が採択された。社会学的見地から地域の再生、ふたば未来学園高などとの連携に取り組んでいる。
 活動の中心となる「ふくしま学(楽)会」は「ふくしまから伝えたいこと、知らなければならないこと」をテーマに、八月四日に第二回会合を開催した。地域の課題について、NPOなどの団体、高校生、研究者が実践報告し、一般参加者も交えて議論を深める。広野町をはじめ、浜通り各地から発表者を迎え、分野によっては他大学からも専門家が参加する。来年一月には提言をまとめる。
 真剣な討議から古里再生に懸ける思いが伝わる。惜しむらくは、一般の参加者が少なく、限られたメンバーでの話し合いになっている。自治体と協力し、もっと多くの参加を促す工夫が必要だ。
 研究者と住民では知識量が違う。住民からは「はじめは言葉の意味が分からず、通訳がほしいほどだった」と指摘する声があった。用語集など基本が分かる資料を会合時に配布すれば、参加しやすくなる。一方で住民は、行政や大学に任せきりではなく、復興をわが事と考える当事者意識を高めなければならない。
 支援事業が学術研究だけに終わらない成果を願う。大学と自治体、地域団体、住民の本気になった活動が、浜通りの復興、未来を担う人材育成につながる。(鈴木俊哉)

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