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「三平」に会う(8月11日)

 魚捕り、昆虫採集、花火、盆踊り…。子どものころの夏の思い出は生涯の宝になる。漫画家の矢口高雄さんは生まれ育った秋田県横手市で多感な時期を過ごした。豊かな自然で感性を磨き、その後の人生の教科書にする。
 日が暮れるまで山や川で遊ぶ。虫や魚を追い掛けて命の大切さを知り、人間と自然が共存する知恵を学んだ。代表作の一つ「釣りキチ三平」には、古里で育まれた人生観が込められている。一九七〇年代に連載され、釣りブームのきっかけをつくった。
 貴重な原画展が九月二日まで喜多方市美術館で開かれている。デビュー前のスケッチや単行本のカラー表紙をはじめ肉筆三百点が並ぶ。人間にとって、本当の豊かさとは何か、本物に触れることの大切さを伝える。七月に開幕し、三週間が過ぎた。主に五十代以上のファンが訪れて、懐かしむ。
 美術館は、展示室がわずか二部屋しかない。だが、週末の入館者は二百人を超える。きょう十一日、矢口さんが一日限りで来館する。秋には七十九歳を迎える。半世紀以上にわたった創作活動の秘話や、次世代に残したいメッセージを語る。「三平世代」にとって、古き良き熱い夏がよみがえる。

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