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【平成最後の追悼式】思いを語り継ぐ(8月15日)

 平成最後となる七十三回目の終戦記念日を迎えた。天皇陛下は皇后さまと共に政府主催の全国戦没者追悼式に臨まれる。来年四月三十日で退位するため今回の出席が最後となる。陛下は即位以来、欠かさず、平和を願う姿を見せた。各地で太平洋戦争の戦没者を悼み、悲劇の記憶を継承する大切さを行動ににじませてきた。
 戦争が残した深い傷痕は、永遠に消えない。陛下の思いと、戦争を体験した人々の記憶を新たな時代に語り継ぐことが、私たちの務めとなる。
 天皇陛下は戦時中に疎開を経験し、焼け野原になった首都の光景を、その後「全く想像することのできないものでした」と語られた。戦争の記憶を風化させないとの気持ちが非常に強く、国内外での慰霊につながっているという。即位後これまでに、東京都の硫黄島、米自治領サイパン、パラオのペリリュー島、フィリピンなどを訪れた。いずれも激戦地だった。日本人だけでなく、全ての犠牲者の霊を慰めた。沖縄県には皇太子夫妻時代を含め計十一回訪れ、遺族にも寄り添った。その心遣いと行動に心から敬服する。
 本紙は十五日まで「73年目の思い 受け継ぐふくしまの戦争」を五回にわたり連載した。県内の元兵士が壮絶な経験を振り返った。しかし、つらい体験をした世代が高齢となっている。不戦の誓いが歴史の流れの中に埋没するのでは-との不安がある。風化を防ぐための取り組みを一人一人が考えなければならない。
 終戦記念日に合わせて各地で戦争に関する企画展が開催中だ。福島市のコラッセふくしまは十六日まで「平和のための戦争展」の会場となる。戦死者の遺品、市内に投下された模擬原爆の破片などを展示する。これらの会場を訪れ、戦争がどれだけ愚かな行為かを胸に刻んでほしい。
 政府は日中戦争開始以降の戦没者数を民間人も含め約三百十万人とする。命を落とした人々は銃弾や砲弾が飛び交う戦場で、あるいは焼夷[しょうい]弾の炎に包まれる都市や工場で最期に何を心に浮かべたのか。愛する家族、美しい古里、国の未来…。無念だったに違いない。それぞれの、かけがえのない人生に思いをはせよう。
 広島市で六日に行われた原爆死没者慰霊式・平和祈念式で、地元の小学校に通う男子六年生が大きな声で訴えた。「学んで心に感じたことを、伝える伝承者になります」。平和学習で被爆者の体験談を何度も聞き、語り継ぐ大切さを身に付けた。同じ考えを持つ子どもたちが、後に続くことを願う。(川原田秀樹)

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