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【医大入試の不正】政府や社会にも課題(8月16日)

 東京医科大の不正入試問題は波紋を広げている。林芳正文部科学相は全国の国公私立大の医学部医学科を対象に、入試の公正性を緊急調査する考えを示した。一大学の不正が全国調査に発展する異常事態だ。他大学の入試にも不正があるのではないか、との疑念が生じているためという。実態解明を急いでほしい。
 東京医科大は女子や三浪以上の男子の合格者数を抑えるため二〇〇六(平成十八)年から得点操作を繰り返していた。出産や育児による離職率が高いなどを理由に女子を差別し、入試への信頼を損なった責任は重大だ。
 内部調査委員会は「女性差別以外の何物でもない」「受験生への背信行為」「大学の自殺行為に近い」と批判。前理事長と前学長が主導したと認定し、「同窓生の子弟を入学させ、寄付金を多く集めたい思いがあった」と動機を挙げた。最高学府である大学の役割を忘れ、経営安定を最優先したと言わざるを得ない。
 人口減で私立大は学生確保に苦労し、経営は厳しさを増しているとされる。だからといって、寄付金を当てにできる受験生に手心を加えて優先的に合格させる手法は許されない。意欲と能力のある受験生が不合格となり、医師の道を閉ざされる恐れさえある。
 東京医科大は付属病院で心臓手術を受けた患者が相次いで死亡し、学位論文審査に関わる教授が現金を受領するなどの問題が以前にあった。前理事長と前学長が私大支援事業を巡る汚職事件に絡み贈賄罪で先月在宅起訴されるなど経営は混乱している。
 一方で本県の市町村と寄付講座設置の協定を締結し、民間病院に医師を派遣するなど医療充実に貢献してきた。それだけに、今回の不祥事に落胆する関係者は多いに違いない。本県のように医師不足に悩む地方の期待に応えるためにも、経営体制の立て直しと優れた医療人の養成を望む。
 女性の働きやすい環境づくりは社会の要請だ。安倍晋三内閣は「すべての女性が輝く社会づくり」を重要施策に掲げる。六月に決定した「女性活躍加速のための重点方針2018」は、女性の活躍を支える安全・安心な暮らしの実現、あらゆる分野における女性の活躍、女性活躍のための基盤整備を打ち出す。
 東京医科大の対応を批判するのはたやすい。だが、出産や育児を経た女性の職場復帰に政府や社会が有効な手を打ってこなかった側面があるのではないか。資源小国日本の頼みは優れた人材の育成・活用に尽きる。突き付けられた課題は深刻だ。(鞍田 炎)

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