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【廃炉産業】集積へ てこ入れを(8月18日)

 自民、公明両党が政府に提出した東日本大震災と東京電力福島第一原発事故からの復興加速化のための第七次提言に「廃炉分野への地元企業の参入や企業誘致を促進する方策の検討」が盛り込まれた。廃炉関連産業の集積は浜通り再生の柱の一つだが、思うような成果は見られない。東電はもちろん国、県を挙げたてこ入れが必要だ。
 福島第一原発構内では東電をはじめ原発メーカーや大手ゼネコン、そして協力企業の社員や作業員ら毎日五千人が働いている。近隣には企業の事務所や宿舎が立ち並び、住民に匹敵する数の人たちが居住している町もある。地域への経済効果はそれなりにあるのだろうが、新たな産業が育っているとは言い難い。
 東電は「作業に携わる人たちの約六割は地元雇用であり、物資・資材の調達も含め地元優先で対応している」としている。ただ、技術が確立している一般土木分野などが中心で、廃炉産業の核になるであろう新たな技術開発を伴う分野になると「地元優先」とばかりも言っていられないのが現状のようだ。
 提言は具体的な方策として「地元企業が参入できる見通しが立てられるよう、今後の廃炉作業における具体的なニーズを分かりやすい形で提示する」ことなどを求めている。東電などにとっては原発に関する技術とノウハウを有する企業グループなどと作業を進めた方が効率的なのかもしれない。そうだとしても、地場産業の育成のためには広く門戸が開かれていることが重要だ。国も東電も被災地の産業再生の責任を負っていることを忘れてはならない。
 企業誘致の促進に向けては動機付けが欠かせない。研究者の間からは「研究開発は環境が整っている既存の施設で十分対応できる。現状では浜通りに新たに拠点を設置する必然性がない」との声も漏れる。民間企業であればメリットを求めるのも当然だ。税制面での優遇、補助金のかさ上げ、優れた人材の育成と供給、優先的な技術移転…。被災地に企業を呼び込むにはあらゆる方策を併せ講じた環境整備が求められる。
 震災と原発事故から七年半近くが経過し、復旧・復興が目に見えるようになってきた。ただ、道半ばであり、産業再生は喫緊の課題の一つだ。福島・国際研究産業都市(イノベーション・コースト)構想も法定化された割には動きが鈍い。総花的な構想の中から既に動き始めている廃炉に重点を置き、関連産業の集積を図る施策を展開するべきではないか。(早川正也)

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