あぶくま抄・論説

日曜論壇

  • Check

地方創生が目指す社会(8月19日)

 二〇一七年、日本人の平均寿命は男性八〇・七五歳、女性は八六・九九歳で過去最高を更新した。平均寿命とは、死亡率が今後も変わらないと仮定し、その年に生まれたゼロ歳児があと何年生きられるかを表している。学生の年齢で、あと何年ぐらい生きられるかを調べたところ、六九・二九年、約七十年間だった。
 ところが、今、この「死亡率が今後も変わらない」という仮定が崩れつつある。イギリスのリンダ・グラットンの『LIFE SHIFT ライフシフト 100年時代の人生戦略』によれば、平均寿命は、十年ごとに二~三年ずつ伸びている。二十一世紀生まれの学生は、百歳まで生きる確率がかなり高いと言われている。
 この本では、十八歳の学生が今の自分をどう見るかではなく、七十歳、八十歳、百歳になった学生が、今の自分をどう見るのかを考えてほしいと問いかけている。今、学生が下そうとしている決断は、未来の自分の評価に耐えうるかどうかを、この本は問いかけている。
 さらに地方からの人口流出がこのまま続くと、「若年女性(二十~三十九歳)」が二〇四〇年までに50%以上減少する市町村が八百九十六(全体の49・8%)になると推計される。これらの市町村は、いくら出生率が上がっても将来的には消滅する恐れが高いとされている。
 他方、産業・社会構造が資本集約型から知識集約型にシフトしつつある。あらゆる産業分野でデータ活用による高付加価値が進むことにより、地方のポテンシャルを引き出す可能性がある。
 地方創生が実現すべき社会は、「個人の価値観を尊重する生活環境を提供できる社会」である。都市に出なければ教育機関や働く場所がないということではなく、生まれ育った地域で、個人の価値観を尊重して生活し、その地域を豊かなものにしていくための、継続的な営みができる社会の実現が期待されている。その時、高等教育は新たな役割を担っていく。十八歳で入学する伝統的な学生だけでなく、多様な年齢層の学生の多様なニーズに応える人生百年時代におけるリカレント教育を通じ、高等教育があらゆる世代のための「知識の共通基盤」となることが期待されている。
 高等教育機関が高等教育という役割を超えて、地域社会の核となり、知識基盤のプラットフォームという役割を担い、日本のこれから、地域のこれからを創るという新たな役割を再構築していく。
 そして、短期大学は、その強みを明確にしていく。短期であること、少人数教育であること、地域でのアクセスの良さ、高齢者も含めた生涯学習を通じた地域貢献ができることも、強みである。
 自県内入学率・就職率ともに七割を上回る地方の進学機会の確保という重要な役割を持ち、女子学生の教育を充実させ、幅広い教養を踏まえて、職業または実際生活に必要な能力を育成する教育を実施する。個人の価値観を尊重する社会の実現に向けて、地方創生に貢献する人財を育成していく。
(西内みなみ・桜の聖母短期大学学長)

カテゴリー:日曜論壇

日曜論壇

>>一覧