あぶくま抄・論説

論説

  • Check

【田村の観光施設】回復基調を軌道に(8月21日)

 田村市常葉町の観光施設「ムシムシランド」の今季来場者数が一万人の大台を超えた。東日本大震災と東京電力福島第一原発事故以降は初めてで、市内の観光関係者を喜ばせた。回復基調を持続させ、周辺の他施設にも効果を広げる必要がある。
 放送作家の鈴木おさむさんがプロデュースする特別展「世界三大奇蟲[きちゅう]展」を開催したほか、会員制交流サイト(SNS)や動画投稿サイト「ユーチューブ」を活用した宣伝が奏功したとみられる。市常葉振興公社は「鈴木さんらの助言、後押しが大きかった。客層も大きく広がった」と感謝している。
 施設のカブトムシ自然観察園は、ドーム状に網で覆った八百平方メートルのコナラ林で、数多くのカブトムシと触れ合える。震災前の二〇一〇(平成二十二)年度、約一万三千三百人が来場した。翌年は原発事故で緊急時避難準備区域に指定されたため休止を余儀なくされた。二〇一二年度から再開したが、その後の来場者は七千四百人から九千六百人までの間で推移していた。昆虫マニアの間で全国的にも知られる施設の一万人達成は、復興を印象づける一つの指標として評価されるべきだ。
 今季は二十六日まで開館している。上積みを期待したい。同時に解決が急がれる課題を残していることにも目を向けなければならない。
 滑り台やスライダー、アスレチックなどの遊具があった遊園地は震災後の閉鎖が続く。敷地内の除染で生じたフレコンバッグ入りの廃棄物を一時保管中で、再開のめどは立っていない。ただ廃棄物は今年度内に中間貯蔵施設へ搬出される見通しだ。遊園地が再開すれば、相乗効果で家族連れを呼び戻すことにつながる。市の対応が待たれる。
 今夏の好天や暑さで田村市内にある主な観光施設の入り込みは軒並み好調だという。「あぶくま洞・入水鍾乳洞」「仙台平」などは、いずれも前年同期を上回る入場者数を示している。大切なのは再び訪れるリピーターをどれだけ呼び込むかだ。
 あぶくま洞ではプロ野球・楽天戦のパブリックビューイングを七月二十一日に行い、話題を呼んだ。斬新なイベントの考案に加えて、おもてなしにさらに磨きをかけていこう。東京五輪・パラリンピックがある二年後に向けて増えるであろう外国人観光客に対しても同様だ。観光客の心をつかむのは、その土地で感じた有形無形の「良き思い出」に尽きる。これは県内のほかの観光施設にも等しく言えることだ。(浦山文夫)

カテゴリー:論説

論説

>>一覧