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【汚染水公聴会】地元協議も急ぐべき(8月27日)

 東京電力福島第一原発事故の汚染水問題で、浄化後に残る放射性物質トリチウムを含む水の処分に関する公聴会が三十日に富岡町、三十一日に郡山市と東京で開かれる。
 政府は意見を処分方法の検討に加味するとしている。一方で、政府とは独立した立場の原子力規制委員会は、海洋放出が唯一の方法として早期実施を求めている。公聴会は海洋放出の地ならしではないか、との見方も出ている。政府は客観的な立場で参加者の声をすくい上げ、トリチウム水問題を前に進めるよう求めたい。
 処分方法について、政府の作業部会は(1)希釈して海洋放出する(2)深い地層に注入する(3)固形化材を混ぜて地下に埋設する(4)トリチウムを含む水蒸気を大気に放出する(5)トリチウムを水素に変化させて大気に放出する-の五つの選択肢を打ち出した。これを基に政府の小委員会が絞り込みを進めている。
 小委員会によると、海洋放出と水蒸気放出には規制基準が存在し、国内外の原発で放出実績がある。地層への注入は適用できる既存の基準がない上、長期的に監視する方法も確立されていない。地下埋設にも規制や監視面で課題がある。水素放出は技術的な研究開発を要するという。風評被害については、海洋に放出した場合、周辺海域の水産物と観光に及ぶと想定する。水蒸気放出と水素放出は周辺地域全体の全産品と観光、地層注入と地下埋設は福島第一原発近郊の農林水産物や観光に影響するとしている。
 各処分方法を巡る技術的、社会的な問題を公聴会で示されたとして、参加者は何が最善なのか判断がつかないだろう。政府は疑問点や不明点に率直に答える姿勢が必要だ。
 汚染水を巡っては、浄化後の水に放射性物質トリチウム以外の放射性物質が残っていることが明らかになった。原子力規制委の更田[ふけた]豊志委員長は、希釈して法令基準濃度を下回れば海洋放出を容認する考えを示している。公聴会で政府は、この問題への見解と対応もしっかりと説明する責任がある。
 汚染水の貯蔵タンクが増え続ける中、トリチウム水の取り扱いは廃炉作業を進める上で差し迫った課題ではある。ただ、どの手法を導入するにしても、風評被害を受けかねない農林水産業者、観光業者らの理解を得て最終判断するのが筋だ。影響を受ける範囲も品目も異なる風評への対応策を個別に示す必要もある。公聴会を出発点として政府は地元関係者との協議を急ぐべきだ。(五十嵐稔)

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