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四番力のススメ(8月27日)

 イラストレーターの安西水丸[あんざいみずまる]さんの造語に「四番力」がある。著書「水丸劇場」(世界文化社)で強調した。一番でないと気が済まない人に好感を抱かない。頂上を狙うナンバー2や三番手とは一線を画す。きらりと光る個性を備えつつ、四番目あたりに控える人に心を引かれた。
 歴史の中でも主役級の武将には魅力を感じなかった。源義経ではなく木曽義仲、豊臣秀吉よりも脇坂安治[わきざかやすはる]に興味を持つ。脇坂は「賤ケ岳[しずがたけ]の七本槍[やり]」の一人に数えられる。一番志向の福島正則には「同列にされるのは迷惑」などと毛嫌いされた。子孫は兵庫県たつの市を領地とする龍野藩主を務め、明治に至るまで家名を残す。
 全国の城下町を巡った安西さんの随筆集「ちいさな城下町」(文芸春秋社)にも四番力への愛着がにじむ。十万石ぐらいまでの二十カ所を選び、県内は三春と二本松を訪れた。二本松では、安達ケ原の黒塚や高村智恵子の生家を見学した。城跡で歴代藩主や二本松少年隊の悲劇に思いをはせる。
 企画展が九月二日まで福島市の県立美術館で開かれている。原画やポスター、本など約七百四十点が並ぶ。多彩な仕事ぶりと四番力を愛した理由が浮かび上がる。

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