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南郷トマト(8月28日)

 平成の大合併で県内の市町村数は九十から五十九に減った。多くの地名が消えた。古里を失うような思いを巡らせた人は少なくない。今となれば、新しい地名も定着した。それでも旧地名がしっくりする時がある。
 合併で南会津町に組み込まれた旧南郷村に再び光が当たる。南郷トマトが農林水産省の地理的表示(GI)保護制度に登録された。県内第一号となった。制度では地名の入った優れたブランド農産物を国が証明する。産地特有の気候と風土、栽培技術が生みだす逸品のみが「GIマーク」を付けて出荷できる。
 一九六二(昭和三十七)年に村の生産者十四人が栽培研究会をつくり、歴史が始まった。当初は地元でも買い手がつかなかった。収量も伸びず、市場関係者から「品質は日本一だが、産地の小ささは世界一」と評された。地道に栽培技術の改良を重ねる。新品種も取り入れた。作付けは増え、日本を代表する産地に育った。
 夏野菜の代表格といえるトマトだが、南郷産の収穫はこれから本番を迎える。九月上旬から十月にかけて酸味と甘みのバランスが最も良くなる。「秋味」の限定ブランドとして消費者に届く。かむほどに郷愁もほとばしる。

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