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使命(8月31日)

 富士の裾野を戦車が駆ける。「斉射用意、撃て」。激しい発射音が夏の空気を震わす。「弾着、今」。遠くに命中の土煙が上がる。陸上自衛隊の総合火力演習が二十六日、静岡県内で繰り広げられた。
 最大規模の実弾訓練で、本県出身者を含む二千四百人の隊員が参加した。三月に新設された水陸機動団が加わり、離島の防衛、奪回を想定した作戦を展開する。敵の通信を断つ電子戦の攻防の様子も公開した。練度の高さに近年は一般の見学希望が増え、入場券の抽選倍率は三十倍近い。二万四千人が見守った。
 観覧会場まで急な山道を登る。来場者は息を切らす。「もう少しです、頑張ってください」。若い隊員が励ます。震災や豪雨災害にも出動し、活躍する力である。助けを求める住民を背負い救い出す姿は、被災地の人々の心に焼き付いている。炎天下の演習場で土ぼこりにまみれ、銃を抱えて突進する。託された使命の重さが伝わる。
 県内の部隊も訓練の様子や装備を各駐屯地の創立記念行事で披露し、車両の体験搭乗も実施する。福島駐屯地は十月七日に催す。それぞれの地域に根付く姿を通し、普段は意識することのない防衛の「今」を感じ取れる。

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