あぶくま抄・論説

あぶくま抄

  • Check

土湯温泉の化石(9月2日)

 福島市の土湯温泉は標高四百メートルほどの山あいにある。かつては海の底だった。多くの魚や動物がすんでいたのだろう。七十年前に見つかった痕跡が太古の情景への思いをかき立てる。
 絶滅哺乳類「パレオパラドキシア」は、二千三百万年前から一千万年前にかけて北太平洋沿岸に生息したとされる。カバやジュゴンに似た想像図の姿がかわいらしい。昭和二十年代に土湯温泉町の砂防ダム工事現場から骨化石が出た。東京教育大(現筑波大)に運ばれ、人知れず眠っていた。昨年、研究者が見つけた。二日まで会津若松市の県立博物館に展示されている。
 観光協会は複製の常設展示や発掘体験を企画する。骨付きもも肉入りカレーなど化石にあやかった料理を売り出す。キャラクターも作った。地元の小学生六人から、名前やまちおこしに役立つ妙案を募る。授業で化石について学ぶ青写真も描く。古里の歴史に興味を持ってほしいと願う。
 温泉街は震災と原発事故の影響で苦境にある。五軒の旅館が廃業し、十一軒に減った。観光客を取り戻す努力が続く。苦しい時こそ新鮮な発想が役立つ。温泉につかりながら、昔の生き物が泳ぐ姿を思い浮かべてみよう。

カテゴリー:あぶくま抄

あぶくま抄

>>一覧