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【和台遺跡の活用法】暮らしとの両立が必要(9月3日)

 福島市は、市内飯野町明治にある国指定史跡の和台[わだい]遺跡の保存活用計画を二〇二〇年度末までに策定する。
 県道の改良工事路線上にあり、市教委が保護すべき範囲とした約四万八千平方メートルの遺跡内には約二十世帯の市民が生活する。全体を公園にするのは難しく、活用よりも保存に重点が置かれる見通しという。市民の暮らしを守るとともに、歴史的価値や魅力を十分に発信できる保存と活用法を考える必要がある。
 和台遺跡は県道改良工事に伴い、一九九六(平成八)年から七年間、発掘調査が進められた。縄文時代の遺跡としては県内最多となる二百三十八軒の竪穴[たてあな]住居跡、二十四棟の掘立柱[ほったてばしら]建物跡、百二十七基の埋甕[うめがめ]を確認した。人体文[じんたいもん]土器と狩猟文[しゅりょうもん]土器も出土し、いずれも県重要文化財に指定されている。約四千年前の縄文中期の集落構造や縄文人の生活ぶりを知る上で歴史的な価値が高い。二〇〇六年七月には、約四万八千平方メートルのうち約一万四千平方メートルが国指定史跡となった。県は遺跡の下を約百五十メートルにわたりトンネルにする予定で、工事はまだ行われていない。
 市は保存活用計画の策定に向けた取り組みを昨年度始めた。計画を着実に行うには国指定史跡の範囲を広げ、追加指定を受けるのが不可欠という。このため昨年度と今年度、文化庁の指導を受けながら改めて調査している。二カ所あるとしていた集落の広場が一つだけだった可能性が高まった。八月には現地説明会を開き、県内外からの約六十人が遺跡の特長を再確認した。
 市は調査を基に追加指定の面積を確定させて国に申請し、策定委員会で計画をまとめる。保存が中心になるとしても、資料館は欲しい。貴重な土器の複製品や遺跡を紹介するパネルを展示するだけでも考古学ファンの理解が深まる。追加指定に向けては宅地と農地の地権者合わせて約二十人の同意が必要となる。市には地元全体から一層の協力を得る努力が求められる。
 市内岡島には縄文時代の宮畑[みやはた]遺跡があり、二〇〇三年八月に国指定史跡となった。公園化され「じょーもぴあ宮畑」として二〇一五年八月に全面開園した。掘立柱建物や竪穴住居を復元し、体験学習施設を設ける。土偶作りや土笛作り教室など、多くの催しを企画し、積極的に誘客を図る。今年六月末までに約十六万人が体験学習施設に来館した。
 国史跡に指定されている縄文時代の遺跡が二カ所ある市は全国的に珍しい。和台と宮畑-。相乗効果が生まれる活用を望む。(川原田 秀樹)

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